第26回Festaは「ミュージック・ラウンジ♪バーン」(東京・江東区)にて5/13(日)に開催しました。
参加者数17名+Yoshio@主宰の18名(男性7名+女性11名)、新顔さん1名の参加と、若干少ない人数で開催が危ぶまれましたが、会場のバーンさんのご厚意と参加者の皆様のご協力に助けられて、無事開催することができました。
第1部
2007年初頭にリリースされた新作アルバムを3枚。
まずはMarina Rei(38/Roma出身)の「Al di là di questi anni」(2007)。パーカッション奏者でもある中堅カンタウトリーチェで、癒し系の優しげな声が魅力的なMarina Reiですが、過去の自身の作品を弦楽四重奏を中心としたアコースティックセットで再録音されています。生ピアノの響きと弦楽隊の調べが美しく、どちらかというと秋の木漏れ日の中のドライヴの時にぴったりの雰囲気のアルバムに仕上がっています。
まずはアルバムタイトル曲"Al di là di questi anni(ここ数年のあれやこれ)"。たおやかな生ピアノの調べと、リリカルな弦楽四重奏の響き、そして穏やかなMarina Reiの声が絶妙に入り混じって、最高にリラックスできる秀作に仕上がっています。
続いて2000年のヒット曲"Inaspettatamente(思いがけず)"。弦楽隊が醸し出す不安定な緊張感ある和音と、Marina自身が奏でるパーカッションが、張りつめたテンションのイントロに仕上がっていて、癒し要素の高いこのアルバム全体の中で、適度な香辛料の役目を果たしているように感じます。
Marina Reiは主にアフリカやアラブの社会慣習である『女性割礼』の廃止活動に身を投じていて、アルバムのインサートの最後のページに、2人のアフリカの少女の屈託のない笑顔の写真を掲載しています。
第1部2人目は、大御所Franco Battiato(62/Sicilia州Catania近郊出身)。数年周期でカメレオンのように作風を変えるアーティストとして有名ですが、何と言ってもその振れ幅が実験音楽からクラシックまでと、実に幅広い範囲&掴みどころがないのが、他の追随を許さないBattiatoの特徴であり、魅力だと思います。
イタリアの中で、歴史上最も多くの異民族の流入を受けたSicilia州は、今でも人種のルツボであり、多様な文化が融合した結果、Battiatoのような鬼才が誕生しやすい地だとも言われています。
最新作「Il vuoto(空白)」(2007)から、アルバムタイトル曲"il vuoto"を、2007年サンレモ音楽祭にゲスト出演した時の映像で。イギリスで活躍するイタリア女性バンドMABを従えて、お得意のエレポップスタイルの弾けた音楽を聞かせてくれます。いや〜60過ぎても感性が若々しい。
ビデオクリップとサンレモのステージと交互に映し出される映像なのですが、途中、神様の予言が入る部分では、明らかに東洋の神らしき出で立ちの人物が登場します。Battiatoは東洋、特に日本に少なからず興味を持っているようなので、日本の神なのかもしれませんね。
続いては"Stati di gioia(喜びの状態)"。Battiatoのクラシカルな魅力が溢れる作品です。歌メロの裏で鳴っているオーケストラの美しい響き、そして歌の合間に投入される、混声合唱のスリリングな美しさが、素晴らしい。
第1部のラストは、実力派カンタウトリーチェMariella Nava(47/Puglia州Taranto出身)。自身で歌う他、数々の歌手に数え切れないほど多くの楽曲を提供してきたMariellaの新作「Dentro una rosa(薔薇の中に)」(2007)は、イタリア歌謡が世界の中心だった時代を彷彿とさせるような、実にスケールの大きな歌い上げ系の良質なメロディの楽曲が詰まったアルバム。生まれながらにして名盤と言える出来かもしれません。
そのアルバムの魅力を凝縮したような"Via della poesia(詩への道のり)"。サビの部分のメロディの美しさとそれを支えるオーケストラの調べ、大胆な転調。往年のサンレモ音楽祭の常套手段のような楽曲。といいつつ、静かな部分でベースが不規則な動きをするなど、なかなか凝ったアレンジが施されています。Giorgiaあたりに歌わせても最高かな、と思える曲。
そして"Fade out"少々緊張感のあるイントロで力強く始まる曲ですが、サビの部分は力強くも美しい楽曲で、Iva Zanicchiあたりが歌っても似合いそうな曲に感じました。
また通常のCDジャケットは、赤いフィルターをかけられたMariellaの顔写真のアップですが、恐らく初回限定仕様だと思われるスリーブが付けられています。このスリーブ、白地に薔薇の花びらと女性の横顔を合わせたデザインでくり貫かれていて、そのくり貫きからCDジャケットの赤い色が見えることで、情熱の赤い薔薇に見えるという仕掛け。
さらに良く見ると、そのくり貫きからMariellaの目もかすかに見え、ジャケットを手にした者は、まるで薔薇の花の中から見つめられている気分にさせてくれます。このスリーブに薔薇の香りが付いているのもおしゃれなところ。
FESTA会場の多くの参加者の耳や心にも大きく響いたようで、このアルバムは買うぞ!という発言がアチコチから沸き起こりました。
第2部
第2部は若手アーティストを3名。
Francesco(27/Milano出身)は、元DJ Francesco名義でラジオDJ、サンレモ音楽祭出場、ミニアルバム発売などをしていました。父がPoohのリーダーRoby Facchinettiであることと、若者の特権を最大限に活用したおふざけモード全開で、コミカルな歌い方や全身に入れたタトゥーを見せつけるようなパフォーマンスをして話題を取ってきたものの、そろそろ真面目に音楽に取り組む覚悟を決めたようで、DJの冠を外し上品な出で立ちに変更。
その決意ある旅立ちを父として援助したかったのでしょうか、Roby FacchinettiはFrancescoの2007年サンレモ音楽祭出場をサポートし、Francesco con Roby Facchinettiというデュオとして出場。"Vivere Normale(普通を生きる)"を歌いました。Festaでもサンレモの映像でお届けしました。2人が並ぶと薄いブルーの眼差しは、すぐに親子であることを語りかけてくれました。ハモる部分ではFrancescoが下を、父Robyが上を歌っていました。
そのサンレモ音楽祭出場曲をアルバムタイトルに掲げたFrancesco名義のファーストアルバムは、ほぼ全曲をFrancesco自身が作曲。父譲りの作曲の才能を見せ付けています。ところが1曲ゴーストトラックが仕込まれていて、それはB-Narioの2004年の曲"Non cambieremo mai(僕らは決して変えたりしない)"。これがまた、生ピアノと弦楽団による美しいアレンジが施された実に良い作品に仕上がっています。誰かとデュエットしているのですが、なにぶんゴーストトラックゆえ、何もクレジットされていません。父Robyの声とは違うので、B-Narioのメンバーとのデュエットなのかもしれません。
続いてBrenda e Daniele Battagliaのシングル盤"Vorrei dirti che è facile(易しい事だと君に言いたい)"。今度はPoohの中でRobyに次いで作曲数が多いギタリストDodi Battagliaのご子息Daniele Battaglia(26)とi GensのベーシストEttore Cardulloの愛娘・Brenda(19)とのデュエット。RADIO-ITALIATVで番組ホストを務めていたDanieleがついにCDデビューとなった、という訳です。
同じPoohでもこちら父子は、曲作りを息子に任せて置けなかったのか、父Dodiとの共作になっています。若い男女向きのカラオケで流行りそうな感じの楽曲、という感じでしょうかね、シングル盤には、しっかりとカラオケエディションはもちろんのこと、Danieleのパートだけを抜いたもの、Brendaのパートだけを抜いたものと、カラオケバージョンが3バージョン入っているのも、予めカラオケ市場でのヒットを期待しているように感じます。
第2部ラストは、2007年サンレモ音楽祭で総合優勝を果たしたSimone Cristicchi(30/Roma出身)。往年のベテラン歌手や実力派が勢揃いした2007年のサンレモ音楽祭で、前年に新人部門の準優勝したばかりの彼が総合優勝するとは、いろんな意味で予想外でした。
Biagio Antonacciへの憧れをストレートに歌った曲で注目を集め、女子大生へ想いを馳せる曲をヒットさせるなど、どちらかというと能天気なイメージがあった彼ですが、今年のサンレモ音楽祭は、精神病患者の悲哀と世の中の差別を歌った深刻で重苦しい楽曲"Ti regalerò una rosa(君に一輪の薔薇の花を贈るよ)"で出場し、それが優勝してしまうというのは、病めるイタリア社会を映し出す鏡なのでしょうか・・・・
子供のころから40年も精神病院に閉じ込められている53歳のAntonioから、ある女性にしたためられた手紙の内容の歌詞になっています。
君に一輪の薔薇を贈るよ
あらゆるものを描くために赤い薔薇を
君の涙を和らげる薔薇を
君を愛せるように薔薇を
君に一輪の薔薇を贈るよ
まるで僕のお嫁さんのように白い薔薇を
あらゆる小さな苦痛を忘れさせる白い薔薇を
というサビの部分は、名作文学「アルジャーノンに花束を」を彷彿とさせます。
小学生以下の字だけど許してね
この手が震えて止まらないんだ
僕らは健常者にとっては厄介者。ゴミみたいな存在なんだ
そうした精神病患者の悲哀を並べたあと、彼は彼女への想いを綴ります。
君はまるで天使のようだった
そして最後に彼は改めて言います。
行く前に君にこの手紙を残しておくよ
もう行かなくちゃ
僕が感情表現を身に付けたことを知ったら
君はびっくりしてくれるよね
うん、君はびっくりするよ
だってAntonioは空を飛べるんだから・・・
自分の意志だったのでしょうか、彼女を喜ばせたかったのでしょうか。いずれにせよ、彼はこの手紙を残して、高い所から「飛んだ」のでしょう・・・・
こんなに重い気持ちになる曲・・・
ほとんど知られていないし、またあまり知りたくもない世界の事をまざまざと歌い、イメージを突き付けてくるこのような曲が優勝してしまうイタリア社会というものが、またひとつ判らなくなりました。
このサンレモ優勝曲を含むフルアルバム「Dall'altra parte del cancello(鉄格子の向こう側から)」(2007)、同アルバムの特典DVD付きの2バージョンが3月にリリースされました。が、初回のDVDは精神病院での患者へのインタビュー映像のみ・・・・かすかにBGMとして彼の楽曲が流れているだけ・・・・これは・・・・見る気が起きませんし、FESTAでも使えません・・・
5月になって正式なDVDが発売になったので、期待を込めて入手してみると・・・・初回の特典DVDにサンレモ優勝曲のヴィデオクリップが追加になったモノ・・・・あ〜、がっかり。Simone Cristicchiのライヴ映像を見たいのに・・・
せっかくなので、FESTAでは、このDVDに収められたヴィデオクリップでお届けしました。
2曲目は、"L'italiano(イタリア男)"。古くは1960年代のGiorgio Gaberから現代の巨匠Ivano Fossatiまで、イタリアの重鎮カンタウトーリの魂を受け継いでいるCristicchiらしく、今回のアルバムではToto Cutugnoのヒット曲であり、イタリア男のアイデンティティを歌い上げた名曲をカバーしています。
しかしながら、その冒頭にはまた違う曲がほんの2フレーズほど入れられています。それは、イタリア歌謡が初めて共通語で歌われるようになったきっかけの曲「Bella Ciao!(やあ、美しい人よ!)」です。その短いながらも覚えやすい歌詞とメロディ、そしてそのタイトルそのものが、イタリア男のアイデンティティのようなセリフではありませんか!
第2部最後の曲は、続いてSimone Cristicchiの"L'Italia di Piero(ピエロのイタリア)"。ローマ時代から受け継がれたようなファンファーレや、大道芸の雑踏のようながやがやとしたSEが挿入された、どこかレトロな雰囲気が漂う楽しい曲です。
ピエロという名の男の眼を通したイタリアの側面が描き出されていますが、これはおそらく、彼がもっとも 敬愛している故Fabrizio De Andréの初期の代表曲"La guerra di Piero(ピエロの戦争)"を意識した作品と言えるでしょう。


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