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第2部


第2部は『イタリア映画祭2011』に関連するコーナー。

すっかり毎年のゴールデンウイーク恒例となっているイタリア映画祭ですが、2011年は特にイタリアPOPネタの映画作品が多かったのも傾向の一つと言えるでしょう。

イタリアPOPSのヒット曲を映画のタイトルに据えただけでなく、映画の主人公たちがそのヒット曲を口ずさむなど、登場人物の心象風景の描写や時代検証、映画のストーリーなどとも綿密な関連を持つ作品が数本あったことを、イタリアPOPSファンの方なら気付かれた方も多い事でしょう。

まずは、映画『La Prima cosa bella(はじめての大切なもの)』(2010)。『David di Donatello賞(イタリアのアカデミー賞に相当)』の2010年度の作品賞・他複数部門賞を総なめにした映画作品。


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映画は1971年の夏のヴァカンスでMicaela Ramazzotti(ミカエラ・ラマツォッティ)が演じる若い母親が美人ママコンテストに優勝するところから始まりますが、家族の中の男たち・・・夫と幼い息子・・・は複雑な心境で、無邪気に喜ぶのは娘だけ。

嫉妬に駆られた暴力亭主のもとから逃げ出し、2人の子どもを抱えてたくましく生きて行く母ですが、そのあまりにも『女の生き様』に息子の心は捻じれ、そのまま中年になった現在2010年、母の死期に直面して、ようやく長年のワダカマリを解いていく息子という映画です。


上記の映画のトレーラーの後半に流れるのが、1970年イタリアPOPSの同名ヒット曲"La prima cosa bella(はじめての大切なもの/邦題:愛の贈り物)"。サンレモ音楽祭1970年で2位となった楽曲で、作曲&歌ったのが当時30歳のカンタウトーレNicola Di Bari(ニコラ・ディ・バリ/71歳/Foggia近郊出身)。作詞はイタリア随一の作詞家Mogol(モゴール)。


そして映画のエンディングロールでは、若手カンタウトリーチェMalika Ayane(マリカ・アヤーヌ/27歳/Milano出身)の2010年カヴァーヴァージョンで幕を閉じます。こちらのPVは、映画のシーンを盛り込んだ素敵な仕上がりになっています。

※当サイトでのMalika Ayaneの紹介記事はコチラ
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上記の楽曲は、日本のiTunesストアで購入可能です。
[楽曲]

[videoclip]

ギターを手に取って
あなたに弾いて聴かせよう
習う時間がなかったから
弾けやしないけれど
あなたに聴かせよう

この声が聴こえるよね
歌っているのは私の心
アモーレ アモーレ アモーレ
それが私が言えること
あなたには判るでしょう?

人生で初めての大切なものは
若々しいあなたの微笑み まさにあなたそのもの
木々の間には 星が
夜は明けて
恋心は いつもより一層
いつもより一層

と歌われるこの歌は、劇中の母から子供たちに向けて歌われ、子供たちが母親を想って歌うというシーンに活かされており、後半の死期が迫った母のベッドでも母子の3人で歌われるという見事な演出で、隣の部屋で待機する親戚や友人たちからは『stupendo!(素敵だわ!)』と感嘆も漏れてきます。

さて、この映画『La prima cosa bella(はじめての大切なもの)』には、他にも往年のイタリアPOPSが盛りだくさんに劇中に挿入されています。冒頭の美人ママコンテストでは、審査委員長が"L'immensita(無限/邦題:涙に咲く花)"を歌うシーンが。

これは1967年のヒット曲で、『モザイクカンツォーネ』という異名を取った曲作りで一世を風靡したカンタウトーレDon Backy(ドン・バッキー)が作曲し、前出の偉大な作詞家Mogol(モゴール)が作詞した楽曲で、Don Backy自身とJohnny Dorelli(ジョニー・ドレッリ/日本語表記:ジョニードレルリ)によって歌われました。2005年には人気ロックバンドNegramaro(ネグラマーロ)がカヴァーしてヒットさせました。


さらには劇中では、表題曲の"La prima cosa bella"よりも重要な役割を果たしている曲がありました。それはサンレモ音楽祭1970で4位に入賞したCamaleonti(カマレオンティ)の"Eternita(永遠)"でした。日本ではサンレモ音楽祭でパートナーを務めたOrnella Vanoni(オルネッラ・ヴァノーニ)ヴァージョンの方が有名ですが、イタリアでは断然Camaleonntiの持ち歌として認識されていますし、実際にCamaleonti版の方が凝ったオーケストラアレンジが施されていてツウ好みに仕上がっています。

Camaleontiは1963年から活動を開始し、途中メンバーの死去などの危機を乗り越えて、現在もなお活動を続けている人気バンドで、あと数年で結成50周年を迎えることになります。

映画の中では夫から逃げ出し、2人の子どもを抱えた母が、泣き出してしまいそうな自分の気持ちを抑えながら子供たちに歌ってきかせ、子供たちも一緒に歌うというシーンで、暖かくフィーチャーされておりました。

そして映画のラストシーンでも、母の死後、あの頃のように海辺を楽しもうとする息子。そのバックにこの"Eternita"があらゆる想いを暖かく包み込んでいくという、まさに主題歌級の役割を果たしているのです。

ここに居ると
永遠の味わいがする
あなたを愛した後で
私のそばに眠る あなたを見つめる

あなたを起こさないようにするよ 絶対に
何故ってあなたは微笑んでいるから
きっと素敵な夢を見てるんだろう
閉じた睫毛の奥で

永遠 さあ両腕を広げてごらん
私がここに居るよ 眠ってる幸福の傍に
そのために生きるよ 必要な時には
私がそこに居るよ その涙を拭うために

この歌詞の意味が劇中のシチュエーションとかぶって涙を誘うではありませんか。

Camaleontiの曲では、他にも"L'ora dell'amore(愛の時)"という1968年のヒット曲が流れるシーンもありました。これはイギリスのProcol Harum(プロコル・ハルム)の"Homburg(ホンバーグ/フェルト帽)"のイタリア語カバー。

さて、こうして映画『La Prima cosa bella(はじめての大切なもの)』に大きくフィーチャーされたCamaleontiの中心人物であり、上記2曲のヴォーカルを務めているTonino Cripezzi(トニーノ・クリペッツィ/65歳/Milano出身)から、日本の皆さんへスペシャルメッセージが届いていましたので、FESTA会場でご紹介しました。

a te e a tutti gli amici giapponesi invio un affettuoso abbraccio
e spero di incontrarvi tutti molto presto
...auguri e buona fortuna.....Tonino

あなたと日本の友人たちへ愛おしさを込めた抱擁を贈ります。
そして皆さんと早くお会いできることを願っています。
では皆さんに幸多かれと祈ります。…トニーノ

長年、Toninoのヴォーカルに憧れ続けていた筆者は、もう感無類の境地に達したのは言うまでもありません!



そして、映画『Figli delle stelle(星の子どもたち)』(2010)。

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港湾作業で発生した事故死に対し、社会保障に前向きに取り組まない政府に憤りを感じ、担当大臣を誘拐して懲らしめようと企む、事故死者の同僚の男。

社会からはみ出しかかっているヤサグレ男たちが意気投合して誘拐を実行するのだが、誘拐すべき人物を取り違え、誘拐事件は迷走して行く・・・が、行く先々で、社会に不満を持つ人々から応援され、事件に加担する仲間が現れて・・・といったコメディタッチながらも裏に現代のイタリア社会が抱える負の部分を浮き彫りにした作品。

    
この映画のタイトルにも使われ、劇中でも非常に重要なテーマ曲として使われているのが、1977年にイタリア中で大ヒットした楽曲"Figli delle stelle(星の子どもたち)"。作者&歌っているのはAlan Sorrenti(アラン・ソッレンティ/日本語表記:アラン・ソレンティ/当時27歳/現61歳/Napoli出身)

日本のiTunesストアでも購入可能です。

Alan Sorrentiは、イタリア人の父とイギリス人の母の間に生まれたハーフで、1970年代初頭に当時トレンドだったプログレッシヴ・ロックのスタイルでデビューしますが、この1977年よりPOPSテイストに転身を遂げて、大成功を果たします。

当時の世界的なディスコブームを背景に、イタリア人には広く『ディスコの帝王』のイメージで定着している人物です。

この"Figli delle stelle"を含むアルバム以降、アメリカの売れっ子スタジオミュージシャンによるバンドToto(トト)が演奏に加わり、Airplay(エアプレイ)でも活躍した売れっ子プロデューサーJay Graydon(ジェイ・グレイドン)がプロデュースして大ヒットを連発していました。

バイリンガルのAlanは、英語ヴァージョンも華麗にこなし、日本では1981年に英語盤のコンピアルバムが発売されています。

1980年に仏教に改宗し、1987年にはアルバム「煩悩即菩提(邦題:永遠(とわ)の星)」を発売しています。


映画『Figli delle stelle(星の子どもたち)』では、誘拐犯たちが人質を連れて最終的に立て篭もるのが、スイス国境に隣接するスキー場のロッジ。手に取れるような星空の下で、運命に導かれるように集まった誘拐犯たちが、このAlan Sorrentiの"Figli delle stelle"の歌詞に自分たちの数奇な運命を重ね合わせてみるのです。

僕らは星の子どもたち
辺りを廻る夜の子どもたち

僕らは星の子どもたち
世界を前にして 決して立ち止まることはないさ

僕らは星の子どもたち
歴史もなく 時代もない 夢のヒーロー達

僕らは今夜 星の子どもたち
時の中で迷うために 僕らは出会うのだ

この曲がヒットしていた1977年当時にリアルタイムでディスコで踊って楽しんでいた世代は、推定すると現在の50代となります。

誘拐犯の中心人物5人の中で唯一の50代は、Paolo Sassanelli(パオロ・サッサネッリ/53歳)が演じるRamon(ラモン)。

他の誘拐犯たちはアラフォー世代ぐらいなので、1977年当初はまだ小さかったため、踊りに関してはリアル世代ではない、という登場人物の年齢設定が絶妙なシーンがこちら。

バンドで同曲をコピーしていたという主人公格のPierfrancesco Favino(ピエールフランチェスコ・ファヴィーノ/42歳)が演じるPepe(ペペ)が、特徴的なイントロをエアギターで奏でて、自己流に踊りだすと、50代のRamonが『なんじゃ、それ!』と突っ込みを入れて、『こうだよ、こう!』とリアルタイム世代の踊りのこだわりを見せます。

さらには間違われて誘拐された事務次官のStella(ステッラ)は、演じたGiorgio Tirabassi(ジォルジォ・ティラバッスィ/51歳)が、やはりリアルタイム世代なので、人質とはいえ、この曲を聴いたらじっとしていることなんてできない。という時代考証も演出されていて見事でした。

つまりイタリアでは、この"Figli delle stelle"が、世代を超えて愛聴され続けている楽曲であることが感じ取れるところが見どころの映画作品だったと思います。

そして映画のエンディングで流れた同曲は、Irene Grandi(イレーネ・グランディ/42歳/Firenze出身)によるカヴァー。

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この"Figli delle stelle"は、巨匠Claudio Baglioni(クラウディオ・バリォーニ/60歳/Roma出身)も、1997年にAlan Sorrenti本人とのデュエットでカヴァーしております。

Baglioni46歳、Sorrenti47歳時の映像がこちら。
Baglioni先生とあろうものが、間奏が入るところで間違えて2番の歌詞を歌い出してしまうところはご愛敬。

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さて、この映画『Figli delle stelle(星の子どもたち)』は、ヒット曲をタイトルに据えた作品だけあって、他にもイタリアPOPSネタが多々あり、人質となった事務次官Stella氏が息子に託した遺書めいた手紙には、故Luigi Tenco(ルイジ・テンコ/1938-1967/27歳没/Alessandria近郊出身)の"Ragazzo mio(息子よ)"(1965)から引用されていました。

息子よ 
いつか父のことを誰かから聞くことだろう
父は頭にいくつも大志を抱いていたと 
でも結局は・・・ 何もやり遂げなかったと

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他には、Eugenio Finardi(エウジェニオ・フィナルディ/59歳/Milano出身)の"Le ragazze di Osaka(大阪の女の子たち)"(1983)が流れるシーンも。

映画監督を務めたLucio Pellegrini(ルーチォ・ペッレグリーニ)はインタビューに『あの曲は日本へのオマージュさ』と答えてくれています。

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前出のAlan Sorrentiも日本女性の名前を冠した曲をリリースしていますので、5月FESTA第2部のラストはその楽曲"Kyoko mon amour(キョーコ・モナムール)"(1997)で。

イタリアで『キョーコ』という日本女性名から連想されるのは、コミック『めぞん一刻』のヒロイン・響子さん。作者の高橋留美子さんは、イタリアでもマンガ界の巨匠として非常に有名です。

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注)記事中の歌手の年齢は、記載時点での誕生日の到来を考慮はせず、2011年に達する年齢で表記しています。

Continua alla prossima puntata.(続く)