2011年1月25日に初来日したSimona Molinari(スィモーナ・モリナリ/日本語表記：シモーナ・モリナーリ/28歳/Napoli生まれL'Aquila育ち)に対して、ブルーノート東京のステージを控えた楽屋でのインタビューをして参りました。

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※ブルーノート東京のSimona Molinariステージレポートはこちら
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[自身の音楽について]

筆者(以下、筆)：僕があなたを初めて見たのは、サンレモ音楽祭2009のステージだったのだけれど、その時とても興味を抱いたんだよね。なぜならたくさんの出場者の中で、あなただけJazzスタイルのパフォーマンスで、しかも楽曲を自分自身で書いているということだったから。
きっとこの人は偉大なカンタウトリーチェ(女性シンガーソングライター)になると予感したんだ。
でもなぜあなたはこのサンレモ出場曲に"Egocentrica(我がまま女)"ってタイトルを付けたの？

Simona(以下、S)：アーティストって、ステージ上ではよく我がままになって、強い態度になることがあるってことを表現したかったの。でもステージを降りるとシャイで引っ込み思案の人って多いのよ。実は私も凄くシャイなの。この私の歌では、こうしたアーティストたちが持つ2重の側面、ステージ上の顔とステージを降りた時の顔を説明しているのよ。

筆：あなたはEgocentricaなの(笑)？

S：えぇ(笑)、ステージ上ではね！でも本当、ステージを降りて普通の生活の中ではシャイで、毎日、引っ込み思案に過ごしているのよ。Egocentricaって、日本語では"リコーテキナ"って言うんでしょ？

筆：？あぁ、"利己的な"だね。あるいは"我がまま"・・・"ジコチュウ"ってのがいちばん近いかな。

S：あぁ、OK!　"ジコチュー"、"ジコチュウ"ね! （MCに使えるかしら、って表情を浮かべます）

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筆：それから、僕らにとって驚きだったのは、あなたがそのサンレモ2009のステージにOrnella Vanoni(オルネッラ・ヴァノーニ/Milano出身/77歳)を呼んでデュエットしたこと。そして2ndアルバム「Croce e delizia(十字架と歓喜)」では、あなたは"Amore a prima vista(一目惚れ)"を書いて、Ornellaとデュエット録音する快挙を成し遂げてしまったんだよね！Ornellaとのコラボはどのようにして生まれたのか教えてくれる？

S：私がOrnellaの音楽に魅了されていたからなの。彼女はイタリアの歌手の重鎮クラスの一人だけれど、彼女は私の世界観にもとても近いものがあるって感じていたわ。POPS歌手なのに、たくさんの偉大な音楽家とコラボレーションしていて、私がやりたい事と似ていると感じたの。
それでシンプルにまずは彼女に私の曲を聴いてもらう方法を取ったのよ。それは"Egocentrica"ではなくもっと前の曲でね。そのようにしてコンタクトしてみたの。

筆：それはSanremoLab(訳注：サンレモ音楽祭出場枠が勝ち取れる新人コンクール)の時のこと？

S:そう、SanremoLabを通じてコンクール、そしてサンレモ。イタリアでは最重要なフェスティヴァルだわ。あらゆる歌手がこのサンレモの門を通っていくのよ。
サンレモの後、私は"Amore a prima vista(一目惚れ)"を書いて、2ndアルバムに収めることにしたのだけれど、Ornellaや彼女のスタイルなんかを意識しながら曲を書いていたのよ。それでOrnellaの電話をかけてみたの。サンレモの後、個人的にも仲良くなっていたからね。一緒に歌ってくれない？って訊いてみたら、快諾してくれたのよ！そしたらこの2ndアルバムはゴールドディスクを獲得しちゃったわ！

筆：そういえばあなたは他にも賞を獲得したよねぇ！

S：Mogol賞(モゴール賞)ね！"Egocentrica"の歌詞に対していただいた賞なの。私にとって、とっても重要で素敵な事だったわ！

筆：あなたはもっと若い世代のミュージシャンともコラボしているよね。Jacopo Troiani(イァコポ・トロイァーニ/20歳/Roma出身)とか・・・

S：Giò Di Tonno(ジォ・ディ・トンノ/37歳/Pescara出身)ともね！

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筆：そうそう、Giò Di Tonno！Jekyll & Hyde(ジキルとハイド)だったね。

S：そう、そのミュージカルだったわ！そうねぇ、Jacopo Troiani、他のミュージシャンとも・・・Fabrizio Bosso(ファブリツィオ・ボッソ/38歳/Torino出身)ともね！トランペット奏者でこのブルーノート東京にも3〜4回出演しているわ。そしてSolis String Quartet(ソリス・ストリング・クァルテット)とも。とってもファンタステックだったわ

筆：Solisとの共演は、この2ndアルバムに収められているよね。

S：そう、ラストソングの"Tutto il rumore del mondo(世界のあらゆる騒音)"ね。そしてStefano Di Battista(ステーファノ・ディ・バッティスタ/42歳/Roma出身)とも。サックス奏者のね。

筆：そして『Amiche per l'Abruzzo(アブルッツォの為の女友達)』では、Nicky Nicolai(ニッキー・ニコライ/51歳/Roma出身)とKarima(カリマ/26歳/Livorno出身/アルジェリア人とのハーフ)と共演していたよね！

S：その通りよ！とってもとっても巨大なコンサートだったわ。MilanoのSan Siroで開催されたのよ。

筆：でもそのコンサートは・・・残念ながら、あなたの育った街、L'Aquilaの大地震の復興の為に行われたコンサートだったんだよね。

S：そう地震自体の問題ではなく、その地震によって壊滅状態になってしまったのよ。

筆：それであなたはGiò Di Tonnoと一緒に書いた曲"Nell'aria(空気の中で/＝あたりには)"のvideoclipでは、大地震で壊滅したあなたの故郷L'Aquilaでロケを行って映像化していたんだよね。

S：その通りよ・・・

筆：哀しいよね・・・もし良かったら、どのようにしてあなたがその被災の苦しみを乗り越えたのか教えてくれる？

S：単純にはいかなかったわ・・・私は何人かの知り合いを失ってしまったし・・・故郷に帰るとたまらなく哀しくなるわ・・・まだまだ被災の爪跡が残っているところがあるし・・・復興ってそんなに早急には進まないものなの・・・まだまだ元には戻らないわね・・・でも私の両親は今でもそこに住んで、実家を修復したのよ。そこには両親と2人の兄弟が住んでいるの。
私は今RomaとMilanoで暮らしているけれど、L'Aquilaに帰ると、哀しい気持が沸き起こってしまうの・・・でも将来、きっとうまくいくわ。ちゃんと復興して、以前よりもっと素敵な街になると思っているわ。

筆：辛抱が必要だね・・・

S：そう、辛抱しなきゃね。

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筆：そしてそのイタリア中部地震復興支援コンサート『Amiche per l'Abruzzo』に参加して、Lucio Battisti(ルチォ・バッティスティ/1943-1998/55歳没)の"Un'avventura(冒険)"をNicky NicolaiとKarimaと歌っていたよね？このコラボはあなたにどんな事をもたらしてくれたのかな？

S：Karimaとはサンレモで知り合ったわ。Nicky Nicolaiともサンレモで出会ったわ。Nicky Nicolaiは前出のStefano Di Battistaの奥さんだから、彼を通してすぐに知り合いになれたの。それで3人でコンサート会場に元気をもたらすためにこの曲を歌ったの。素敵なことだったわ。観客が皆、私達と一緒に歌ってくれて。

筆：Lucio Battistiは今でも、あなたたちイタリア人にとってとても重要なアーティストなんだね？

S：そうよ！　とても美しい曲をMogolと共にたくさん書いた偉大なカンタウトーレだったわ。

筆：死後10年以上経過した今でも？

S：そう、今でもなお、最も偉大なイタリア人アーティストだと言えるわ。

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筆：ところで、あなたの作品には度々、聖書から引用した要素がある事に気が付いたよ。"Peccato originale(原罪)"とか"Croce e delizia(十字架と歓喜)"とか。あなたは敬謙なクリスチャンなの？

S：ハハハ(笑)。私は神様を信じているわ。日曜日に必ずミサに出席するような信者ではないけどね。でも聖書にはたくさんの面白い事が書いてあるって思っていたから、私が気に入った部分を聖書から引っ張り出したんだわ。私を見つめている部分、人間を観察している部分など。"Peccato originale"や"Croce e delizia"は、人生は旅の様なもの、翻弄される人生というニュアンスかしらね。私は神様をとても信じているの。

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筆：自分の曲ではどの曲が好き？

S：私の曲の中では・・・う〜ん難しいわぁ(笑)・・・みんな可愛い子供たちみたいに思っているから、判らないわ。でもたぶん"Peccato originale"かしらね。

筆：わぁ！本当？　実は僕もそれなんだよ。"Peccato originale"は、本当に大好きなんだ！
ところで、どんなやり方で曲を書くの？何か楽器を使うの？

S：私の伴侶はピアノだわ。私は頭に浮かんだメロディをまず録音して、ピアノで弾いてみるってやり方。でも私はピアニストではないからね。
そうして録音したものをプロデューサーに渡してアレンジして貰い、それをバンドメンバーに配って一緒に創り上げて行くの。

筆：メロディが先？それとも歌詞が先にできるの？

S：同時よ。特にリズムのパートを思い浮かべながら歌詞を載せてみるの。その相互作用で歌詞もメロディも組みあがっていくって感じ。楽しい遊びみたいな感覚よ。

[日本について]

筆：ではここで、日本について訊いてもいいかな？　あなたはカナダ、アメリカ、中国を廻っていたけれど、日本を訪れたのは初めて？

S：そうよ。初めてなの

筆：最初は日本に対してどんなイメージを持っていた？そして実際に来てみて、どんな印象を持ったの？

S：たくさんの自然にあふれたところだとイメージしていたわ。映画や美しい風景画なんかを見た印象でね。それから東京は美しくも未来的な街だって聞いていたわ。New Yorkみたいにとっても未来的だってね。でもまだ東京を良く見ていないの。昨日着いたばかりだし。でも巨大な街で、美しくて、全てが慎重に正確に進んでいる街って感じかな。

[日本公演について]

筆：今夜は2ステージあるけれど、1回目と2回目のセットリストは違うもの？それとも同じ？

S：1stステージは少し短くなる予定よ。2曲少ないの。それはね、私のコンサートは声にとても負担がかかるのよ。2回続けて同じ曲をやっちゃうと、2回目のステージが辛くなっちゃうから。


訳注：多くのイタリアPOPSファンが1stステージのみ参加すると知って、Simonaは結局、1stステージも2ndステージも、それぞれ19曲を歌ってくれました。当初2ndステージのみで歌うはずだった2曲のうち1曲を1stステージに回してくれたようです。こうした細やかな心遣いもSimonaのお人柄ですね。


なお、今回カメラマン役を務めてくれたのは、POP!ITALIANOのkazumaさんでした。見た目は普通の日本人インタビューアとカメラマンの2人が2人ともイタリア語で話すわ、2人とも日本盤が出ていないSimonaのCDを2枚とも持ってきてサインを貰うわで、Simonaはビックリしてしまい、

『たくさんの日本人がイタリア語が判るのかしら？』

って混乱した質問が飛び出しました(笑)。

kazumaさんも来日前にSimonaの事務所宛に応援メッセージを書いていたようで、サインの際に名前を名乗ると、Simonaはすぐに『あぁ、あなたメールくれた人でしょ！』って覚えてくれていたようです。

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アルバムジャケットや映像から、美人さんだという認識を持っていましたが、楽屋で出会ったSimona Molinariさんの第一印象は、ともかく『か・・・かわいい！！』でした。

ステージ用の派手目な化粧もまだ施していない楽屋のSimonaは、本当に可愛くてキュートで、誰もが抱きしめたくなるような女の子といった感じ。

30分という限られた時間ではありましたが、本番前の貴重な時間を割いて快くインタビューに応じてくれた、美人なのに気さくで暖かい人柄のSimonaさんでした。

インタビューの機会を下さったブルーノート東京様、Simonaの所属事務所Isola degli ArtistiのMaurizioに感謝の意を捧げます。

Grazie a Maurizio dell''Isola degli Artisti"

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