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第2部

 

いよいよサンレモ音楽祭2009コーナーへ突入。今回は受賞者のみにスポットを当てて紹介しました。

今回から新設された部門『Sanremo Festival.59』は、言わばインターネット部門。タイトルが紛らわしいのですが、伝統あるサンレモ音楽祭自体の正式名称が『Il Festival della canzone italiana(イタリア歌謡祭)』ですから、一応異なる名称を付けていることになります。

500曲近くの応募曲の中から100曲程度に絞られ、例年のサンレモ音楽祭(通称)の開催よりも1ヵ月前に、インターネット上でPVが公開され、投票で選抜していく方法が取られました。イタリアの芸能界では駆け出しや、インディーズシーンで活躍する20代前半の若いアーティストたちにその門戸を開放した形となりました。

サンレモ音楽祭が過去の59回を通して、頑なに守ってきた最も重要なルールは

『参加曲は、音楽祭開始日より前に、公衆の面前で演奏されたり、音源が公開されてはならない』

なのですが、このインターネット部門に限ってはそのルールを自ら例外として打ち破った事になります。特に昨2008年にオーディション番組が流行し、出身歌手が成功している事例を取り入れた形かと思います。

そしてそのインターネット部門で優勝したのは、Ania(アーニア/Napoli出身)が歌う"Buongiorno Gente(人々よ、こんにちは)"。なるほど応募者の中では、最も経験と実力を兼ね備えたトップグループに位置するAniaが当選したのは、納得と言えるでしょう。

ハンガリーやドイツ、アメリカなど、主に国外のイヴェントで歌手としての経験を積み、2005年のサンレモ音楽祭の新人部門にも出場。アルバムも2枚リリースし、ソングライターとしても、Mina(ミーナ)やMietta(ミエッタ)に楽曲を提供した実績も持ったカンタウトリーチェ。

 


 

今年のMia Martini賞(ミア・マルティーニ賞・批評家賞)を勝ち取ったのが、Afterhours(アフテルアワーズ)の"Il paese è reale(その国は実在する)"。

オルタナ・Rockバンドとして知られる彼らが批評家賞を受賞するのは、ものすごく意外性を感じましたが、どうやらタイトル通り社会問題をテーマにした楽曲で、批評家たちの精神を刺激したようです。1980年代にMilanoで結成されたバンドで、リーダー&ヴォーカルのManuel Agnelli(マヌエル・アニェッリ)は若く見えますが、43歳になるベテラン・ロッカー。


 

Sanremo 2009

そしてたったひとりの男性歌手と、9人もの実力のある女性歌手が揃った新人部門(今回の正式部門名は『Nuove Proposte(新提案)』)を制したのは、Arisa(アリーザ/27歳/Genova生まれBasilicata州Pignola育ち)が歌った"Sincerità(誠実さ)"。

特定の年齢層や嗜好に偏らない作風で、実に覚えやすいメロディの楽曲のため、音楽祭の会場でもすぐに手拍子が沸き立つような、幅広い層から好評を博しました。

新人部門の発表の際、司会のPaolo Bonlisが優勝者の名を読み上げる直前にも、会場からはしきりに『Ari〜sa!』コールが上がるほど。

何といってもArisaはその特徴的なメガネが印象的で、まるでDr.Slumpアラレちゃんそのもののルックス。そしてARISAという芸名が、家族の名前の頭文字を寄せ集めて作られたというエピソード(父AntonioのA、本人RosalbaのR、妹IsabellaのI、末妹SabrinaのS、母AssuntaのA)と、『みんなのうた』的な作風がマッチして、イタリアの大衆の心をがっちりと捉えたようです。

また今回の新人部門参加者が実力派揃いながら、ソウルフルなタイプばかりだったことも、却ってArisaのような、ほんわかとしたタイプを引き立てることになったと思います。


 

2009年のサンレモ音楽祭は、久々にBig部門(今回の正式部門名は『Artisti(アーティスト)』)からでも落選者が出るという緊張感を伴う内容となりましたが、いったん落選してしまったものの、敗者復活戦で生き返り、なんと総合3位に輝くという不思議な成績を残したのが、Sal Da Vinci(サル・ダ・ヴィンチ/40歳/New York生まれNapoli育ち)の"Non Riesco A Farti Innamorare(僕は君に恋をさせる事が出来ない)"。

Sceneggiata(シェネッジァータ)と呼ばれる19世紀末に誕生したナポリ大衆音楽劇の名役者・Mario Da Vinci(マリォ・ダ・ヴィンチ)のアメリカ公演中に生まれたSalことSalvatore(サルヴァトーレ)は、5歳にして初舞台を踏むという、活動歴が長いベテラン歌手。

今回のサンレモ音楽祭4日目のゲストを迎えたステージでは、共作者のGigi D'Alessio(ジジ・ダレッスィオ)とのステージを楽しませてくれました。

Napoliの闇社会の後ろ盾があると噂されるGigi D'Alessioが、その筋から圧力をかけて、Salの落選を3位入賞に変えさせた・・・という陰口も叩かれていますが・・・


 

総合2位に輝いたのは、一昨年の優勝者Povia(ポーヴィア/37歳/Milano出身)の"Luca era gay(ルカはゲイだった)"。

昨2008年は、エントリーしていながらも、失格扱いとされ出場できなかったため、『Pippo Baudo(ピッポ・バウド/サンレモ音楽祭2008の司会者)によるサンレモ音楽祭反対運動』を起こすなど、『何かをやらかす男』としての期待と話題を集めたPoviaですが、2009年もまた、その楽曲のタイトルが音楽祭開催前から大いに物議を醸しました。

Luca ERA gayと、動詞は過去形で、『ルカは(かつては)ゲイだった→今はゲイではない』という内容であるため、まずは同性愛擁護運動の団体などからクレームが殺到したようです。『ルカはゲイだったけれど、やがて異性を愛するようになった→正常になった』・・・・それじゃあ、同性愛者は異常だと言う偏見を助長する!っていう真の同性愛者からの主張ですね。

カトリックでは同性愛は生殖行為に反するのでご法度。つまり歴代のローマ法皇は、ゲイを認めない立場を貫き、イタリアは直接その思想の影響を受けてきた社会です。ですから社会的にはPoviaの表現する方向は間違っていないのですが、ここまで同性愛者が増殖し、市民権を持ち始めた現代では、そうもいきません。かといって同性愛を肯定するような楽曲を優勝させる訳にもいかないのがサンレモ音楽祭。

Poviaはそのあたりに賢く目を付けて、この同性愛のテーマをわざわざ持ち出して大きな話題を集める策略を立てて、まんまと成功したのだと思います。

反面、同年のサンレモ音楽祭にスペシャルゲストとして出演した名優・Roberto Benigni(ロベルト・ベニーニ)は、『ゲイの人々は、相手を人として愛しただけ』であると、ゲイを擁護する発言をして、多くの人々の喝采を得ました。

いずれにせよ、現代のイタリア社会では、同性愛ネタは話題にすると必ず大きな注目が集まることは間違いないようです。

4日目のゲストを迎えるステージでは、他の出場者が豪華なゲストを迎えた話題性の高いステージを披露する中、Poviaはオーケストラも使わず、自らのギターと専属コーラスガールのみのアコースティックステージを披露するという、『引き算』の演出を図ったのも印象的でした。


そして、サンレモ音楽祭2009の総合優勝を勝ち取ったのは、超予想外のMarco Carta(マルコ・カルタ/24歳/Sardegna州Cagliari出身)。その若さで優勝を勝ち取ったのも意外ですが、何よりも彼が昨2008年にポッと出てきたばかりのタレントだったから。本来なら新人部門から出場すべき経歴の彼が、Big部門にエントリーしたのも不思議でしたが。

彼が芸能界に入ったのは、民放局Media Setのタレントコンテスト番組『Amici(友だち)』で優勝したのがきっかけ(2008年)。その番組の司会者・Maria De Filippi(マリア・デ・フィリッピ)が、サンレモ音楽祭の最終日にゲスト司会者として登場したのも青天の霹靂。なぜなら、民放局の看板キャスターが、国営放送の司会を務めることになったのですから!

総合司会のPaolo Bonolis曰く、『MariaがMarco Cartaをスーツケースに入れてサンレモに持ち込んだ』と半分皮肉交じりのジョークを漏らしていました。

優勝曲は"La forza mia(僕の力)"。作曲したのはPaolo Carta(パオロ・カルタ)。姓が同じCartaですが親族ではありません。Paolo Cartaは、プロのギタリストとして、作曲者、編曲者、プロデューサーとして、Eros Ramazzotti(エロス・ラマツォッティ)やLaura Pausini(ラウラ・パウズィーニ)のレコーディングやステージを支える売れっ子音楽家。特に、Laura Pausiniとはプライヴェートでも親密な仲、と噂されている人物です。軽快なコード進行とメロディが、いかにもギタリストが作ったと感じさせる楽曲です。

これまためでたい事に、サンレモ音楽祭2009の総合優勝曲も新人部門優勝曲も同一の指揮者Federica Fornabaio(フェデリカ・フォルナバイォ)が務めるという快挙。Federicaはサンレモの大オーケストラを指揮するのに違和感を感じるほど、まだ若くて美しい女性であるのも目を引くポイントでした。

音楽祭4日目のゲストを迎えてのステージでは、Marco Cartaは同郷のTazenda(タゼンダ)を招き、Tazendaサウンドと呼ばれる故郷のサルデーニャを彷彿とさせるアレンジと、サルド語の歌詞を織り交ぜたスタイルで同曲を披露してくれました。

オリジナルとはまた異なる魅力を充分に感じさせるパフォーマンスでしたね。



注)記事中の歌手の年齢は、記載時点での誕生日の到来を考慮はせず、2009年に達する年齢で表記しています。

 

Continua alla prossima puntata.(続く)