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第3部

Giorgia(ジォルジァ/37/Roma出身)は、デビュー3年目にしてサンレモ音楽祭(1995年)優勝。Andrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)の"Vivo per lei"のデュエット相手に抜擢されて世界的なヒット曲になるなど、輝かしい活躍を果たし、2002年のベストアルバム「Greatest Hits - Le cose non vanno mai come credi(物事は信じるように行かない)」で、その実力と人気を決定的にした、若手女性歌手ナンバー1の歌唱力を誇っています。

2003年の「Ladra di vento(風泥棒)」をリリースした後、2005年にアンプラグド・ライヴ盤を出したまま待たされていた、実に5年ぶりのオリジナルアルバム「Stonata(音痴)」が2007年初冬にリリースされました。圧倒的な歌唱力を持つGiorgiaが「Stonata(音痴)」というタイトルのアルバムをリリースするというパラドックスが小粋なアルバムに仕上がりました。昨今のイタリア芸能界の歌不足を表すかのように、収録された楽曲のほとんどにGiorgia自身がソングライターとして参加しています。

シングルカットされた"Parlo con te(あなたと話す)"を、Giorgiaの顔のドアップのアングルで収録されたビデオクリップで。Giorgia単独で作詞作曲を手掛けている楽曲で、静かな曲ながら、Giorgiaの内に秘めた熱い魂が溢れ出てくるようなソウルフルな歌い方。Giorgiaの高音部にストリングスのかぶさり具合が美しい。

"La la song / non credo di essere al sicuro(確かなことだとは信じられない)"もシングルカットされた楽曲ですが、日本の妖怪アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』のお馴染みのテーマソングに瓜二つのフレーズが繰り返されるので、日本人の耳にはこびりついてしまう楽曲。

♪ゲッ、ゲッ、ゲゲゲのゲッ!♪

がそのまんま

♪ラッ、ラッ、ラララ・ラッ!♪

になっています。

レゲエのリズムに乗せて、ブラックなテイストのコーラスも入り、Giorgiaはソウルフルに歌います。TVライヴの映像で紹介しました。スラッとしたスタイリッシュなGiorgiaのルックスも楽しめましたね。

そして"Poche parole(言葉少なく)"は、女王Mina(ミーナ/68/Busto Arsizio出身)とのデュエット。このアルバム「Stonata」の最大の話題曲と言っても良いでしょう。その歌唱力ゆえに、数多くのアーティストにデュエット相手として選ばれることの多いGiorgiaですが、デビュー15年目にして、ついに女王とのデュエットのチャンスを掴んだのです。

Giorgia自身の作詞で、作曲がGiorgiaとEmanuel Lo(エマヌエル・ロー)の共作。まるでMinaのために書き下ろされたような、ゆったりとした情緒のあふれる楽曲で、どことなく1980年代のAORっぽさと1970年代のファンクのようなエッセンスがまぶされたサウンドが、洋楽ファンの心をくすぐる作品になっています。


 

さてMinaが出たからには、イタリア音楽界のもうひとりの巨頭を紹介しない訳には参りません。1957年のデビュー以来、実に半世紀に渡りイタリアのミュージックシーンを牽引する、文字通り芸能界の『首領(ドン)』Adriano Celentano(アドリアーノ・チェレンターノ/70/Milano出身)。

1962年に放った"24 mila baci(2万4千のキス)"は、藤木タカシの日本語カバーでもお馴染みの世界的な大ヒット曲ですが、Celentanoのエンターテイナーとしての魅力が開花するのはむしろそれ以降。イタリア社会では良い場面でも悪い場面でも常に話題の中心に存在する真の大スターで、映画俳優やショーマン、コメンテーターとしても本領を発揮しています。

特に1998年にリリースしたMinaとのデュオアルバム「Mina Celentano」は社会現象になるぐらいの大ヒットを記録。翌1999年からは偉大な詩人Mogol(モゴール)と優秀なソングライターGianni Bella(ジァンニ・ベッラ)をコンポーザーに迎えてオリジナルアルバムの制作を始め、「Io non so parlar d'amore」(1999)、「Esco di rado e parlo ancora meno」(2000)、「Per sempre」(2002)、「C'è sempre un motivo」(2004)と出すアルバム全てが、初登場いきなりTOP1を記録。しかも長期に渡ってチャートインし続けるという活躍を続けています。

3年待たされてリリースされた「Dormi Amore - la situazione non è buona(愛よ眠れ、状況は良くない)」(2007)は、11月終わりに発売されるや否や、リリース1.5か月にして、4回ものプラチナディスクを獲得するヒットを記録しました。

タイトル曲"Dormi amore(愛よ眠れ)"をレコーディングスタジオでの録音風景の映像で紹介しました。落ち着いたテンポの演奏をベースにややテンションを混ぜた重厚なサウンドにCelentanoの重低音ヴォーカルが乗ると、もう誰も真似のできないAdriano Celentanoの世界。サングラスをかけたCelentanoは渋い表情で歌入れをしていますが、時々屈託のない微笑みが口元からこぼれ落ちるのがセクシー。その微笑みの元は、アレンジャーのFio Zanotti(フィオ・ザノッティ)とのアイコンタクトから生まれており、この2人の間の強力な信頼関係が伺いしれるようでした。Poohのアレンジでも有名なFio Zanottiですが、そのセンスある手腕を想像し難い、単なる陽気なおっちゃんルックスなのも微笑ましいところ。

故Domenico Modugno(ドメニコ・モドゥーニョ)の1974年の未発表曲"Ragazzo del sud(南部出身の少年)"。なるほど、Domenico Modugnoの"Vecchio Frack(古い燕尾服)"路線に通ずる歌詞の内容で、貧しい南部出身の少年がTorinoに出て来て、警察官になるのと盗賊になるのとで揺れ動いていたが、ついに宝石店を襲ってしまう。逃げる時に警官に発砲されて倒れてしまうが、その黒いストッキングに包まれていた顔を暴かれた時、人々が目撃したのは疎外された南部の顔そのものだった。というストーリー。

再びMogol-G.Bellaの作品に戻り、静かなピアノのイントロから始まる"Hai bucato la mia vita(君は僕の人生に穴を開けた)"は、アルバム発売に先駆けてリリースされたシングル曲だけあって、ゆったりとしながらもテンションが利いた重厚なサウンドの中に、ロマンチックさがあふれる佳曲です。愛に不器用な男が、別れゆく恋人にポッカリと明けられた心の風穴に苦悩する様が歌われています。

余談ですがAdriano Celentanoのプライベートは、1964年に歌手&女優のClaudia Mori(クラウディア・モーリ)と結婚して以来、一度も揺らぐことがないオシドリ夫婦としてお互いをリスペクトしあっています。若いころから70歳を迎える現在まで、一貫した不良を続けるCelentanoですから、それをコントロール続けてきたClaudia Moriは本当に素晴らしい女性なんでしょう。

Celentano最後の曲はCarmen Consoli(カルメン・コンソリ/34/Catagnia出身)が書き下ろした"Anna Magnani"。アカデミー賞を受賞したイタリアが誇る大女優アンナ・マニャーニ(1908-1973)のことを歌っています。アルバムではCelentanoのソロで収録されていますが、イタリアのテレビ番組からCarmen ConsoliがCelentanoに歌って教えるシーンやデュエットするシーンで紹介しました。

Fio ZanottiとCelso Valli(チェルソ・ヴァッリ)という2人の名匠が揃ったスタジオに、作曲家としてのCarmen Consoliが現れます。『Adrianoはもう(私の曲を)歌ったの?』とCarmen。するとCelso Valliが『いいや、まだ聞いてさえいないよ』と。

スタジオでは最近POPS界で引っ張りだこのJazzプレイヤーStefano Di Battista(ステーファノ・ディ・バッティスタ)と彼のクァルテットがAnnna Magnaniのオケ部分を演奏しています。聞き終わったCelentanoは『美しい曲だね、歌詞もいいな』と。Carmenは『気に入ったかしら?』と。『どんな風に歌ったらいいかな?』というCelentanoの質問に対して『ギターがあれば』とCarmen。スタジオに有ったギターがCarmenに手渡され、Carmen先生によるデモ演奏が始まります。

うまい・・・・ギターもさりげなく難しい弾き方をしながら、Carmen独特の歌声で誇らかに歌い上げます。思わずスタジオには『Bellissima!』の声が。
さていよいよCelentanoが歌おうとしますが、Carmenが押しとどめます。『あなたには高いわよ』と。いくらアルトのCarmenのキーとはいえ、Adrianoの重低音域には合いませんものね。

ということで録音済みのオケが流されます。Celetanoが歌詞カードを手に歌い始めます。これまた最初のワンフレーズでもうCelentanoの歌になってしまうところが凄い。Carmenがところどころ一緒に歌ったり、デュエットになり、Celso Valliが指揮をはじめ、いつしかスタジオに居るメンバーで合唱が始まってしまうのが楽しいところ。そしてStefano Di Battistaの倍音の抜けが素晴らしいアルトサックスの滑らかなフレーズで楽曲が終わります。

 


 

注)記事中の歌手の年齢は、記載時点での誕生日の到来を考慮はせず、2008年に達する年齢で表記しています。

 

Continua alla prossima puntata.(続く)