サンレモ音楽祭2020新人部門に出場し、惜しくも予選落ちしたものの、最終的に栄誉あるミア・マルティーニ賞(批評家賞)に輝いたEugenio in Via Di Gioia(エウジェニオ・イン・ヴィア・ディ・ジョイア)の「Tsunami(津波)」(2020)。イタリアでも日本語の"津波"が外来語として定着しているのだが、あの惨事がまだ根強く記憶に残る日本人には、面白おかしい映像に乗せて"チャチャチャ"と歌われると複雑な気持ちになる。音楽が楽しくてしょうがない、というタイプのバンドゆえのパフォーマンスで、別に日本の惨事を弄んでいる訳ではないし、悪気はないのは判っているのだけれど。

彼らはトリノ出身の4人組バンドで、中心層の年齢は28歳。不思議なバンド名は、メンバーの名前を寄せ集めたもので、ヴォーカルのEugenio Cesaroから"Eugenio"、キーボードのEmanuele Viaから"Via"、ドラムのPaolo Di Gioiaから"Di Gioia"を取り出し、最年長のベーシストLorenzo Federiciが命名した。命名者が自身の名前をバンド名に含めていないが、彼らの1stアルバム名が『Lorenzo Federici』なので、デビューアルバムのジャケットには彼ら4人全員の名前が並んでいたのだ。でもこの3人の名前の組み合わせで、"喜びの過程にいるエウジェニオ" という意味になり、彼らの音楽大好きバンドの立ち位置が判るから見事な命名センスだ。

『Tsunami(forse vi ricorderete di noi per canzoni come / 意:多分、こんな曲で僕らのことを思い出してくれるよね)』(2020)は、彼ら初のベストアルバム。サブタイトルは、このアルバムに収録された曲を聴けば、知ってる曲がきっとあるはず。という彼らからのメッセージだ。
Eugenio in via di gioia - Tsunami

サンレモ2020出場中に後夜祭的番組にも出演し、60年代の楽曲などを積極的にカヴァーしたり、一部の歌詞を即興で替え歌したりと、20代のバンドながら、イタリア音楽への造詣の深さ&レパートリーの広さと即興能力を十二分に披露してくれた。
Adriano Celentano(アドリァーノ・チェレンターノ)のカヴァーhttps://youtu.be/BvlQH0kcpWE
Rino Gaetano(リーノ・ガエターノ)のカヴァーhttps://youtu.be/94ervoHF1tI
Vinicio Capossella(ヴィニーチォ・カポッセッラ)のカヴァーhttps://youtu.be/NRrzISrYoD8

サンレモ本選の第1夜で落選してしまった彼らは、残された4夜分の暇を持て余すことはせず、大賞部門出場の歌手たちを巻き込んで、ウラで楽しい遊びをしていた。その年の優勝者となるDiodato(ディオダート)、2位となるFrancesco Gabbani(フランチェスコ・ガッバーニ)、3位となる仲良しのバンドPinguini Tattici Nucleari(ピングイニ・タッティチ・ヌークレアーリ)に始まり、Levante(レヴァンテ)、Raphael Gualazzi(ラファエル・グァラッツィ)、Le Vibrazioni(レ・ヴィブラツィオーニ)、Enrico Nigiotti(エンリコ・ニジォッティ)、Junior Cally(ジュニア・カッリー)、Anastasio(アナスタージォ)そしてBugo(ブーゴ)に至る10組に、ある歌の替え歌の作詞を依頼し、それらを寄せ集めた替え歌をネットで披露したのだ。

タイトルは「Perdere Sanremo(意:サンレモを失って=サンレモで負けること)」、サブタイトルには"あの曲だって判るだろうね"と添えて。そう、それはMassimo Ranieri(マッシモ・ラニエリ)のサンレモ1988優勝曲「Perdere l'amore(意:愛を失って)」の替え歌だった。(替え歌のパフォーマンスは映像中の2分20秒から)

奇跡なのは、第4夜のステージを途中で降りてボイコットして失格となったBugoが、その前代未聞の事件を起こす2日も前に、それを予言するような歌詞を書いていたことだ。

Bugoが書いた詞:
Quando scendero` dal palco, sai(僕がステージを降りる時にはね)
poi risaliro`, perche` e` la RAI(でもきっとまた上がるんだ、だってRAIだから)

その他の替え歌部分も使われた隠喩などは、それを書いた歌手の作風、人となりや来歴などを知っていれば味わい深いものがある。

彼らの曲には年齢相応のラップっぽい歌いまわしもあるが、既に述べたように彼らが生まれる前からイタリアを席巻していたカンタウトーレたちの影響を受けた作風が感じられ、どこか懐かしい雰囲気を感じられる曲も多い。例えば2014年の楽曲「Perfetto uniformato(完璧に標準化されたもの)」

ライヴ映像も楽しい。「Emilia(エミリア)」(2015)

「La punta dell'iceberg(意:氷山の一角)」(2018)は、なんと「冰山角 2050」という漢字タイトルが付けられ、全編に渡って中国語字幕が付けられている。

Lettera al prossimo(意:次への手紙)」(2019)は、“stare in casa version(ステイ・ホーム・ヴァージョン)”と名付けられた最新MVが披露された。外出禁止令下のイタリアで作られている。

※当サイトでのEugenio in Via Di Gioiaの紹介記事
http://piccola-radio-italia.com/tag/Eugenio_in_Via_Di_Gioia

第178回イタリアPOPSフェスタ(2020年9月)紹介曲PlayList


注)記事中の歌手の年齢は、記載時点での誕生日の到来を考慮はせず、2020年に達する年齢で表記。