Pinguini Tattici Nucleari(ピングィニ・タッティチ・ヌークレァーリ/意:戦術核ペンギン)は北イタリアBergamo出身の6人組バンド。2010年結成し2012年デビューの25〜29歳のメンバー編成で、確かな演奏テクニックながらその楽しいステージで一気にファンを増やした注目株。

4thアルバム『Fuori dall'hype Ringo Starr(意:夢中の外で リンゴ・スター)』(2020)は、2019年の既発アルバムにサンレモ音楽祭2020出場曲などを追加したサンレモ・エディションだ。同音楽祭終了後3ヶ月経過した5月末現在、アルバムチャート3位にランキングし続けており、出場組の中で一番商業的に成功したアルバムと言えるだろう。全曲をリードヴォーカリストのRiccardo Zanotti(リッカルド・ザノッティ/26歳)が単独で書き下ろしている。
Pinguini Tattici Nucleari - Fuori dall'hype Ringo Starr(2020)

その不思議なバンド名は、スコットランドのビール名Tactical Nuclear Penguinのイタリア語訳だ。摂氏マイナス20度の環境(=ペンギンが生息する気温)で凍結して作られることで、世界一アルコール度数の高い(32%)ビールとなるそうで、その威力を核に例えた商品名だ。
Tactical-Nuclear-Penguin

シングル第1弾「Verdura(意:野菜)
https://youtu.be/2J4G4NJHnt8

シングル第2弾は「Sashimi(刺身)」は、東京スカパラ風サウンドに乗せて、日本由来の単語 "サシミ"、"スシ"、"サケ"、"ギョウザ" といった単語がポンポン込められているのが聴きどころ。
https://youtu.be/WGqRbimEb6w

アルバムタイトル曲「Fuori dall'hype」"hype(ハイプ)"とは英語のスラングで、元来の意味は "ヤク中患者" だが、現代ではむしろ、誇大広告とか、興奮状態、夢中になってる、という意味で使われる方が主流だそうだ。
https://youtu.be/84_A8lyU9cY

「Ringo Starr(リンゴ・スター)」は、サンレモ音楽祭2020で初出場ながら第3位獲得する大躍進となった楽曲。もちろんタイトルはBeatlesのドラマーの名前で、彼のように脇役のままスターになった人物のことを歌っている。他に引用されているのは、バットマンの相棒ロビンなど。公式ヴィデオクリップは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の有名なワンシーンをそのまま再現している。

彼らの曲の前に流れている当時のヒット曲「Earth Angel」はオリジナルの映画でも使用されているが、ここにもこの題材を取り上げた意味が隠されている。映画の中で"過去の舞台"となった1950年代にThe Penguinsのカヴァーでヒットしていた楽曲だからだ。1950年代のペンギンズから2020年のペンギンズに代わる、という意図が込められているのだ。
https://youtu.be/T_WSXXPQYeY

サンレモ2020の出場曲で想像できる通り、彼らのメンバーにはBeatlesフリークが多いようで、彼らがBeatlesカヴァーをするときは、メンバーで一番のBeatles通のベーシストSimone Pagani(シモーネ・パガーニ/29歳)がリード・ヴォーカルを取る。サンレモ音楽祭開催中の後夜祭番組『L'altroFestival(意:もうひとつのフェスティヴァル)』で彼らが披露したBeatlesカヴァーは「With a Little Help From My Friends」。Beatlesの革命的(このアルバムでポップ・ロックが変わったと言われる作品集)アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(1967)に収めらていた楽曲で、前出のRingo Starrがリードヴォーカルを取る数少ない楽曲のひとつだ。
https://youtu.be/z4ODrJiLfnI

サンレモ音楽祭2020第3夜のカヴァー大会で彼らが披露して見せた楽曲は「Settanta volte(意:70回)」。70回記念大会という節目として注目を集める中で、1950年代から2019年まで8曲をピックアップしたメドレーだった。
https://youtu.be/t3tO9CdQMe0

  1. Papaveri e papere(意:ケシとガチョウ/1952年大会2位/オリジナル歌唱:Nilla Pizzi/ニッラ・ピッツィ)
  2. Nessuno mi puo` giudicare(意:誰も私を評価できやしない/1966年大会2位/オリジナル歌唱:Caterina Caselli/カテリーナ・カゼッリとGene Pitney/ジーン・ピットニー)
  3. Gianna(ジァンナ/1978年大会3位/オリジナル歌唱:Rino Gaetano/リーノ・ガエターノ)
  4. Sara` perche' ti amo(意:私があなたを愛してるからそうなるわ/1981年大会5位/オリジナル歌唱:Ricchi e Poveri/リッキ・エ・ポーヴェリ)
  5. Una musica puo` fare(意:音楽はできる/1999年大会新人部門8位/オリジナル歌唱:Max Gazze`/マックス・ガッゼ)
  6. Saliro`(意:僕は降りるだろう/2002年大会14位/オリジナル歌唱:Daniele Silvestri/ダニエレ・シルヴェストリ)
  7. Sono solo parole(意:それは単なる言葉/2012年大会3位/オリジナル歌唱:Noemi/ノエミ)
  8. Rolls Royce(ロールス・ロイス/2019年大会9位/オリジナル歌唱:Achille Lauro/アキッレ・ラウロ)

日本の20歳代の若者グループが、80年代の映画や1950年代の楽曲を知っていて、すぐにカヴァーできるなんていうことは想像できないのだが、イタリアではよく見受けられる傾向だ。ここがイタリアと日本の大きな違いのひとつ。イタリア音楽を楽しむには、より広い知見がある方がより深く作品を味わえるということにつながる。するとイタリアPOPSは飽きることなく楽しめるのだ。

彼らの最新シングル「Ridere(意:笑う)」は今春、世界中を席巻したコロナ禍の外出禁止令下で製作されたヴィデオクリップのため、すべてリモート撮影された動画で構成されている。彼らの出身地Bergamoは不幸にも欧州のコロナ禍の中心地となってしまったことも加味して鑑賞したい。
https://youtu.be/8QeOzyCrAak

※当サイトでのPinguini Tattici Nucleariの紹介記事
http://piccola-radio-italia.com/tag/Pinguini_Tattici_Nucleari


注)記事中の歌手の年齢は、記載時点での誕生日の到来を考慮はせず、2020年に達する年齢で表記。