大ヒット映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2015)

2017年初夏以降、日本全国で順次ロードショー中のイタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ(Lo chiamavano Jegg Robot)』(2015)は、イタリアのアカデミー賞に匹敵するダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞(2016年)を最多7部門受賞(最多16部門ノミネート)の記録を更新した大ヒット映画だ。
Lo chiamavano Jeeg Robot

モチーフとなった日本製アニメのリメイクではなく、その実写版でもなく、全く別のオリジナルストーリーを役者が演じている映画で、劇中、偶然の産物で見に付けた怪力パワーを鋼鉄ジーグに例えて、その超人的能力を悪に使うのか・正義に使うのかを描いている。

イタリアで公開された時から日本語の副題『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』を挿入しているほど情熱を注ぎこんだこの作品は(ちなみにその時点で日本での上映は全く予定もされていない)、上記のとおり、まさに空前の大ヒットとなった。

実は日本では視聴率が低かった『鋼鉄ジーグ』

これほどまで日本のロボット・ヒーローへのラブコールが込められているにも関わらず、我々日本人にとって『鋼鉄ジーグ』は、知る人ぞ知る、どちらかと言うとマイナーな作品だった。事実、1970年代にブームとなったロボットヒーローものの名作に埋もれ、視聴率は振るわなかった。それにも関わらず、その玩具だけがヒットしたという微妙な位置付けの作品だったのだ。

余談だがそれ以前は先に原作やアニメが製作され、それに基づいて玩具が開発されるというビジネスモデルだったのだが、『鋼鉄ジーグ』は先に玩具が開発され、その玩具に基づいてアニメが製作された最初の作品でもあったのだ。

1970年代の日本でのロボットアニメの歴史を振り返ってみると、まずは1972年に放送開始された『マジンガーZ』が、ロボット人気の口火を切ったと言って良いだろう。その好調さ故、第2弾の『グレートマジンガー』が1974年開始、第3弾の『UFOロボグレンダイザー』が1975年開始だ。日本人にはとにかく『マジンガーZ』が画期的な金字塔であって、その勢いで第2弾もヒット。だが第3弾にもなると、ちょっと飽きが来た感があった。

なぜなら第3弾『UFOロボグレンダイザー』が放映されたちょうど1974年に『宇宙戦艦ヤマト』が放映開始して大ヒット。アニメにシリアスな要素が込められ、大人が見ても楽しめるようなスケールの大きな作品が好まれるようになっていった時期だったからに相違ない。

くだんの『鋼鉄ジーグ』は1975年放映開始。前年に放映された『宇宙戦艦ヤマト』から生まれた新しい潮流に逆行し、勧善懲悪のお子様向きストーリーだったことで、玩具のターゲットとなる狭い年齢層以外の視聴者層を獲得できなかったようだ。

『宇宙戦艦ヤマト』が切り開いたシリアスものは、『銀河鉄道999』(1978年放送開始)に引き継がれ、『機動戦士ガンダム』(1979年放送開始)で花開く(初年度は振るわずじまいで、実際は1980年の再放送でブレイクしたのだが)。その後は数々のロボットアニメが製作されて多くがヒットし、そのプラモデルが大流行し、劇場版やOVAも続々と製作され・・・と一大ムーブメントとなって行った。

日本と異なるイタリアでの放映時期と放映順

しかしこの日本の流れとイタリアはリアルタイムではない。上記の作品群の中でイタリアで最も最初に放映されたのは実はマジンガーシリーズ第3弾の『UFOロボグレンダイザー(イタリア名:UFO Robot Goldrake』で1978年からの放映だ。これは空前の大ヒットとなり、主題歌も海外混合のシングルチャート上位に食い込むほどの大ヒットを記録したのだ。そして翌1979年に放映開始となったのが『鋼鉄ジーグ(イタリア名:Jeeg robot d'acciaio)』だった。

これらが人気を博したことで、イタリアでは遡って第2作目の『グレートマジンガー(Il Grande Mazinger)』を1979年から、第1作目の『マジンガーZ(Mazinger Z)』を1980年からの放映となったので、この3部作のイタリアでの知名度は、実は日本とは逆となるのだ。

そしてこの1980年に『宇宙戦艦ヤマト(La corazzata Yamato)』、『機動戦士ガンダム(Mobile Suit Gundam/イタリアでの発音は“グンダム”)』の2大巨編が放映されて、イタリアでの日本のSFアニメの人気が決定的なものとなった。

イタリアでは“UFO ROBOT“そして“Jeeg”が
日本のロボットアニメの代名詞だ!

こうしてイタリアでは、元祖日本のロボットアニメと言えば最初期に放映された “UFO robot”と“Jeeg”がダントツで、そのジャンルの代名詞化していると言っても過言ではないのだ。

映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は、1976年生まれの若き監督Gabriele Mainetti(ガブリエレ・マイネッティ)が初めて手掛けた長編作。イタリアで『鋼鉄ジーグ』が放映されていた時に彼は3歳。まさに“三つ子の魂”のように記憶に刻まれているのだろう。

映画監督として将来を占う勝負作に“マジンガー”でもなく“ガンダム”でもなく、“ジーグ”を選んだところが、いかにもイタリア的だと感じさせる。

放映当時に流行していたイタリアPOPSを劇中曲に多用!

ちなみに同映画は、『鋼鉄ジーグ』がイタリアで放映されていた1980年前後に流行していたイタリアPOPSを劇中にふんだんに盛り込んでいるので、イタリアPOPSファンにも要チェックの作品だ。最もフィーチャーされているのが適役ジンガロがカラオケで熱唱するシーンがたっぷり盛り込まれた「Un'emozione da poco(邦題:青春)」(1978)。オリジナルはAnna Oxa(アンナ・オクサ)。

Lo chiamavano Jeeg Robot - Zingaro

そして歌詞の意味と場面の状況を一致させることに一役買った重要な曲がNada(ナーダ)の「Ti stringero`(意:あなたを抱きしめてあげるわ/1982)」だ。

他にも適役ジンガロがLoredana Berte'(ロレダーナ・ベルテ)の「Non sono una signora(意:私は貴婦人じゃない)」(1982)を口ずさむシーンも。

Lo chiamavano Jeeg Robot - Enzo

そしてエンディングは主人公エンツォを好演したClaudio Santamaria(クラウディオ・サンタマリア)が歌う主題歌だ。スローなテンポでアンニュイな感じで歌っているので気付きにくいが、実は日本の主題歌にイタリア語詞を付けたものだ(イタリアでの放映時のイタリア語詞だが、この時は日本と同じアレンジだった)


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