コメディアンでありカンタウトーレ(シンガー・ソング・ライター)でもあるChecco Zalone(ケッコ・ザローネ/出演時38歳/Puglia州Bari出身)が、主演・原案・脚本・音楽を手がける映画『Viva!公務員(Quo vado?)』(2015)が、2017年5月27日よりロードショー決定!

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本作はイタリアで『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の興収を3日で塗り替えるほど大ヒット。

リストラ候補にされるも、安定した公務員職にしがみつこうとするケッコと、リストラ担当官の女性部長。僻地に左遷させて、自主退職させようとする女性部長の策略が始まり。。。と、ベースとなる設定はシリアスではあるが、そこはイタリアのコメディ。

ピエモンテ州のアルプス地域から、サルデーニャ、ランペドゥーサ島と国内の僻地を転々とさせられ、同僚に干される"いじめ"にあっても、何もしなくて良い立場を謳歌するといった、持ち前のタフさ(=ニブさ?)でぬくぬく生き残るケッコ。建前上の彼の評定は"何事にも動じず、適応力と犠牲心が旺盛"。

業を煮やした女性部長は、なんと北極圏の研究所にまでケッコを飛ばす。極地の厳しさにすぐに音を上げて辞退を申し出るケッコだが、コンビを組む予定の女性研究員Valeria(ヴァレリア)に会った途端、前言撤回。一目惚れしたのだ。

このように、左遷先の先々で必ず幸せを見つけるケッコ。住めば都、七転び八起きなどなど、日本のことわざにもあることだが、説教くさい要素は台詞にも、映像にもいっさい出さない潔さ。社会を取り巻く環境設定が日本にも通じることもあり、日本人にも肌感覚で判り易い。

劇中で綴られるこうしたケッコの来歴は、実は全て回想シーン。現在のケッコの所在地はアフリカで、アフリカの目的地に向かう途中で原住民カズー族に捕らえられ、始末されそうになった時に、酋長に身の上話を語っている設定なのだ。このアフリカの原住民たちを引き込み、笑いに誘うケッコの話術の巧みさ!

その目的地には何があるのか? ケッコは最後まで自主退職しないのか? 敵対する女性部長との決着はどうなる? これらの伏線を最後の5分間で回収して、全員ハッピーエンドとなる大団円、というストーリー。

音楽人でもあるケッコ・ザローネは、劇中曲を単なるBGMにせず、歌詞をストーリーや登場人物の心象風景に一致させて使っている箇所があちこちに確認できる。既存曲もあれば、自身が書いた曲、自身が歌った曲などを織り混ぜており、字幕翻訳を担当された関口英子さんが、そこは可能な範囲でしっかり日本語字幕にしてくれている。

劇中、最もクローズアップされた既存曲は、Al Bano & Romina Power(アル・バーノ&ロミナ・パワー)の「Felicita`(意:幸せ)」(1982)だ。サンレモ音楽祭1982で2位、イタリアのチャート首位を獲得した他、ヨーロッパ諸国のヒットチャートにも入るほど国際的に大ヒットした彼らの代表曲のひとつ。

同曲はケッコが子供の頃、父が役所に連れて行ってくれた回想シーンで流れる。ちょうどケッコが子供の頃にヒットしていた楽曲であると同時に、その時ケッコの気持ちが"Felicita`(意:幸せ)"だったからに他ならない。

さらに恋仲となった研究員Valeriaのノルウェーの家で、彼女の連れ子ラルスにケッコが天文学を教えている時、偶然TVから流れるのが同曲の2度目の使用シーン。

TV画面に釘付けとなったケッコ。サンレモ音楽祭2015が中継されており、そこで歌っているのは現在のAl Bano & Romina Powerの2人。この2人は有名なおしどり夫婦で、1960年代から1990年頃まで黄金時代を築いていたのだが、1993年に長女が米国で行方不明となり、今もなお未発見=未解決となったままの事件が起きてロミナが精神を病み、それが原因で数年後に公私ともにコンビを解消する事となった。

その2人が16年ぶりにコンビを組み、シーンにカムバックして大きな話題となったのが2013年。その頃、北極圏に赴任していたケッコは知る由もなかったという状態を示しているのだ。

「よりが戻ったんだ・・・一緒に歌ってる・・・まさにイタリアの重大ニュースだ」

とケッコが涙ぐみながら語るのは、彼らの黄金期とあの忌まわしい事件をリアルタイムで知る最年少の世代であるから。さらにAl Banoがケッコと同じPuglia州出身という身内びいき感も含まれてはいるだろう。ちなみにケッコが勘違いしている点は、公的にデュオ復活となったが、Al Banoが再婚していることもあり、プライヴェート面ではよりが戻ったわけではない、ということ。

ケッコの感慨に対してValeriaとその連れ子たちがキョトン?としているのは、ジェネレーション・ギャップと、おそらくずっとTVを見ない(見られない)環境に暮らしていたことを表しているのだろう。しかしそこがノルウェーであるにも関わらずサンレモ音楽祭はヨーロッパ圏で生中継されており、彼らのの復活コンサートは実はロシアで行われたことなどから、このデュオはかつて全欧中に知られたスターであり、復活が嬉しいビッグニュースであることを暗に示しているのだ。

余談だがAl Banoが書いた「I cigni di Balaka」(1987)を、マイケル・ジャクソンが「ウィル・ユー・ビー・ゼア(Will you be there)」(1991)として盗作したと裁判で判定された事は世界的に有名な話なのだが、日本のメディアではWikipediaにさえもその記載はない。
https://youtu.be/FOjHOoFRTi4

Romina Powerはハリウッド・スターのタイロン・パワーの娘であり、父の死後、母と妹、そして母の再婚相手(イタリアで活動する英国人)と9歳の時にイタリアに移り住み、13歳で映画デビュー。16歳でAl Bano主演の映画のヒロイン役で出演して見初められ、19歳で結婚、という経歴の持ち主。つまりこの2人は歌手でもあり俳優でもあるという、ケッコ・ザローネの先輩格でもあるのだ。

このAl Bano & Romina Powerの復活を知って急激にホームシックに襲われ、イタリアへ帰国したくなるケッコ。続いて流れ始めるのは、このデュオがサンレモ音楽祭1987で3位入賞した「Nostalgia Canaglia(意:ならず者慕情)」だ。

劇中、ノルウェーのイタリア料理店で、水から30分も茹で上げられたパスタを出されて呆れ果てたケッコは、"イタリア料理"と書かれた店の看板を外す暴挙に出る。《インチキ野郎!やたらと"イタリア"を使うな!》と言いながら。

これを機に善良な市民を演じてきたケッコが、イタリア人らしい(?)行儀の悪い言動をするようになる。イタリアへの郷愁感(Nostalgia)とイタリア人の粗野な面(Canaglia)をこの楽曲で同時に表しているのだ。

※当サイトでのAl Banoの紹介記事はコチラ
http://piccola-radio-italia.com/tag/Al_Bano

話は前後するが、劇中前半でケッコが退職条件を交渉するため、ローマの中央省庁に呼び出され、駅から列車に乗って旅立つシーンでかかる楽曲は、Santo California(サント・カリフォルニア)の「Tornero`(意:僕は帰ってくる)」 (1974)だ。この曲もヨーロッパでヒットした。

恋人と駅で別れる歌詞に沿って登場人物の心象風景が描写される・・・がそこはコメディ映画。じっくりと涙を誘う時間を与えず、ローマに着いてすぐ、恋人に電話をかけるとケッコは既に捨てられてしまっていたのだ。リストラ対象から逃れようとの打算で彼女に求婚し、事後の結婚は対象外と判ると求婚を取り消すという、身から出たサビなのだが。

そしてストーリーが進み、イタリアへ帰国することが決まった最後の夜が同曲の2回目の登場シーンとなる。送別会で同曲が同僚たちとカラオケで歌われるのだ。

ストーリーの後半、ついにケッコが元のポストに復職したとき、急にサングラスをかけて歌い出すのが映画の主題歌でもある「La prima repubblica(意:以前のイタリア共和国)」。サングラスと歌い方でイタリア音楽ファンならすぐにAdriano Celentano(アドリアーノ・チェレンターノ/79歳/Milano出身)の歌マネだと気がつくはず。

"以前の共和国"と付けたのは、"以前"の範囲を限定するため。イタリアが共和国となるのは第二次世界大戦後から。つまり戦後のイタリアに限定して、昔は良かった、昔の公務員の待遇は良かった。。。と歌っているのだ。

実はこの楽曲はAdriano Celentanoの「Un albero di trenta piani(意:30階の樹木)」(1972)の替え歌

Adriano Celentanoは、1950年代後半にデビュー後、ずっとイタリアのトップスターに君臨し続ける生きるレジェンド。イタリア最初期のロックスターとしてシーンに登場し、ロックスター特有の数々の無礼をしては都度問題視されながらも、その人気は衰えることはなく、近年は音楽を取り入れた政治番組を持つほどの人材。

芸歴が長いだけでも凄いことなのだが、その間ずっとトップを続けているのは古今東西、例が無い。直近では2016年の年間チャート首位を獲得したことで、その人気が不動であることを再度証明して見せている。

破天荒な性格なのだが、その女性関係はというと、26歳の時に20歳だったClaudia Mori(クラウディア・モーリ)と結婚してからずっと、生涯の伴侶と別れることもなくずっとオシドリ夫婦を続けて現在に至る、というのもロックスターらしからぬ意外な側面。

※当サイトでのAdriano Celentanoの紹介記事はコチラ
http://piccola-radio-italia.com/tag/Adriano_Celentano

ケッコ・ザローネは物マネ・歌マネも得意で、イタリアのミュージシャンでは、Carmen Consoli(カルメン・コンソリ)、Jovanotti(ジォヴァノッティ)、Giuliano Sangiorgi(ジゥリァーノ・サンジォルジ/Negramaro)、Vasco Rossi(ヴァスコ・ロッシ)、Tiziano Ferro(ティツィアーノ・フェッロ)、Eros Ramazzotti(エロス・ラマッツォッティ/エロス・ラマゾッティ)、Kekko Silvestre(ケッコ・シルヴェストレ/Moda`)、Giusy Ferreri(ジゥズィ・フェッレーリ)、Gigi D'Alessio(ジジ・ダレッシオ)、Giovanni Allevi(ジォヴァンニ・アッレヴィ/ジョヴァンニ・アレヴィ)など、老若男女に渡るほどレパートリーが広い。

この『Viva!公務員(Quo vado?)』(2015)の他、『日々と雲行き(Giorni e nuvole)』(2007)、『マフィアは夏にしか殺らない(La mafia uccide solo d'estate)』(2013)の3本が『Viva! イタリアVol.3』として、2017年5月27日よりロードショーが開始となる。Non mancate!(意:逃すな!)

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