サンレモ音楽祭2016大賞部門12位となった「Vincere l'odio(意:嫌悪感に勝つこと)」。歌ったのはメンバー全員が音楽院出身の音楽エリートながら一貫してコミックバンドであり続けるElio e le Storie Tese(エリオ・エ・レ・ストリエ・テーゼ)。今回の出場曲も凝りに凝って、異なる7曲をまるでメドレーのようにぎゅっと1曲分の長さに押し込んだ贅沢な作り。

最初は普通のラヴソングのように始まり、第2パートはナポリのゲイについて。ナポリ語のオネエ言葉で歌われている。第3パートは聖パウロ(新約聖書のパウロ書簡の著者)について。第4パートはネパールで売られているカラブリア産ワインは実はカトマンズ製だったというTV番組をもじったもの。第5パートはいろいろな種類の芋について。第6パートはぶっきらぼうな女を描写。最後のパートは評価されているものの醜い楽曲を揶揄している。

またサンレモ出場の際、彼らが尋常なまでに力を入れるのは、ステージ衣装や扮装。今回は初日は真っピンクの衣装。2日目は異様(奇妙?)な若づくり。そして最終夜は米バンドKissになりきった扮装での出場となった。音楽祭当日、その姿で出場すると、視聴者らが一斉にSNS等にUPし、本家Kissのジーン・シモンズが“動画のリンクを教えてくれ”と投稿したことでも大きな話題となった。

サンレモ出場後、Kissに扮装した舞台裏も動画でUPしている。https://youtu.be/8AjUUYxfTEU 他のアーティストだったら、こんなところに時間を割かず、もっと演奏の練習に注力しろ!と言いいたいところなのだが、いつも文句のつけどころがない抜群の演奏力なので、これは彼らの特権とも言える。

同音楽祭第3夜のカヴァー大会で彼らが披露したのは、「Il quinto ripensamento(意:第五の塾考)」。ベートーヴェン作曲の交響曲第5番を元にした「A Fifth of Beethoven(邦題:運命'76)」(Walter Murphy/映画『サタデー・ナイト・フィーバー』挿入曲)のイタリア語カヴァーである。https://youtu.be/9iljq2es0yw

これらサンレモ音楽祭2016で披露した2曲を収録した彼らのアルバムが『Figatta de Blanc』(2016)。
Elio e le Storie Tese - Figatta de Blanc

このアルバムタイトル名は、明らかにポリスの2ndアルバム『Reggatta de blanc(意:ホワイト・レゲエ/邦題:白いレガッタ』(1979)のもじりで、"Figatta"自体には意味は無いが、アルバムジャケットのイラストと併せて、女性器を意味する俗語"Figa"のニュアンスを出していると感じさせる。放送禁止用語等になるのを避けつつ、受け取る人の脳裏にイメージを持たせる手法のようだ。
Police - Regatta de Blnc

「Il mistero dei bulli(意:不良の神秘)」。不良によるイジメや暴力について歌っており、現代の不良の祖先とかもしれない古代人について語られている。フン族王アッティラ(その活躍が民族大移動時代のきっかけのひとつとなり、結果、西ローマ帝国が崩壊=古代の終焉に導いたとされる)やネアンデルタール人などなど。映画を発明したリュミエール兄弟や映画『野郎どもと女たち』(1955)にも言及している。https://youtu.be/w1KBee36SUI

「I delfini nuotano(意:イルカたちが泳ぐ)」https://youtu.be/-DJ5dyp0Xo4

「Bomba intelligente(意:知的爆弾)」はBanco del Mutuo Soccorso(バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ)のリードヴォーカルだった故Francesco Di Giacomo(フランチェスコ・ディ・ジャコモ/1947-2014/66歳没)のヴォーカルをフィーチャーしている。この楽曲は2005年にFrancesco自身が作詞し、Paolo Sentinelli(パオロ・センティネッリ)が作曲した楽曲で、イラク戦争(第二次湾岸戦争)で使われたハイテク兵器のことを歌っている。バンド向けのアレンジを施して当時FrancescoのヴォーカルをレコーディングしていたテイクがElio e le Storie Teseの面々に託され、完成させたという経緯のようだ。アルバム内にクレジットがないものの、エンディングのヴァイオリンはMauro Pagani(マウロ・パガーニ)とのこと。優秀なカンタウトーレ作品を評価するタルガ・テンコ賞2016年に認定された。最近流行の360度仕様のヴィデオクリップが公開されたが、この後に紹介する他の2曲のヴィデオクリップを加えた3曲分がミックスされているだけなので、モノクロの画面のパートだけ観ればOK。https://youtu.be/Pkmg6SmNcVQ

※当サイトでのBancoの紹介記事
http://piccola-radio-italia.com/tag/Banco

※当サイトでのMauro Paganiの紹介記事
http://piccola-radio-italia.com/tag/Mauro_Pagani

「China disco bar(意:中国のディスコ)」は、イタリアへ移民してきた中国人たちが住むチャイナタウンを描写している。前出の通り3作品をMixした360度映像作品となっているので、スクリーンに中国語が表示されるのが該当の映像だ。https://youtu.be/e5ORyBjO5I4

「Vacanza alternativa(意:交替休暇)」は温泉浴場でキノコリゾットを作っているシーンを描いたファンクナンバー。イタリア語の"キノコ"は"Funghi(フンギ)"であり、"ファンク"は"Funk(フンク)"なので、語呂合わせになっている。例によって360度映像作品となっているので、中央にキッチンが置かれているのが該当の映像だ。https://youtu.be/NB_y7VMfbBs

※当サイトでのElio e le Storie Teseの紹介記事
http://piccola-radio-italia.com/tag/Elio_e_le_Storie_Tese


注)記事中の歌手の年齢は、記載時点での誕生日の到来を考慮はせず、2017年に達する年齢で表記。

Continua alla prossima puntata.(続く)