第3部&第4部

大御所カンタウトーレAntonello Venditti(アントネッロ・ヴェンディッティ/67歳/Roma出身)のアルバム『Tortuga(トルトゥガ/注:カリブ海に浮かぶ島の名前)』(2015)。

Antonello Venditti - Tortuga

そのライヴ盤『Tortuga un giorno in paradiso - Stadio Olympico 2015(意:トルトゥガ いつか天国に - スタジオ・オリンピコ 2015年)』(2015)は、そのサブタイトル通り、ローマの巨大なオリンピック・スタジアムで行われた一大スペクタクルを丸々収録したDVD+2CDに、上記のスタジオ録音盤をも追加封入されたお得&豪華なライヴ盤となっている。2月FESTAは第3部&第4部をたっぷり使ってこのライヴ盤DVDからピックアップした、聴きどころ楽曲や見どころシーンを紹介した。

Antonello Venditti - Tortuga - Stadio Olimpico 2015

数十年の長きに渡って、イタリアのスタジアムを満員にできる、指折りのアーティストのひとりとして君臨してきたVendittiの人気&実力が全く衰えていないことは、映像を一目見ればすぐに判る。長年のファンだけでなく、20代前後の観客も多く、いかに老若男女に渡って絶大な支持を受けている事が実感できる。60代後半の、失礼ながら決してグッド・ルッキンとは言えないアーティストに若い女性が歓声を上げているシーンなど、日本ではまずお目にかかれないはずだ。

さて、2月FESTAのテーマであるGigi D'Alessio来日公演つながりとは何なのか?

それはキーボード奏者のひとりがAngelo Abate(アンジェロ・アバテ)であること。そう、Gigi D'Alessioがワールド・ツアーに帯同し、日本のステージにも立ったあのキーボード奏者が、Vendittiの巨大スタジアム公演も支えていたのだ!

Angelo Abate

さらにはBriga(ブリガ/27歳/Roma出身)がゲストとして生出演し、「Dalla pelle al cuore(意:皮膚から心へ)」そして初期のヒット曲「Roma capoccia(意:ローマのリーダー)」の2曲で共演している。そう、Gigi D'Alessioのワールド・ツアーのタイトルとなったアルバム『Malaterra』の代表曲のひとつ「Guaglione(意:子供/"小僧"の意に近い)」で共演している、Amici2015から躍り出た新人ラッパーだ。

さらには人気カンタウトーレBiagio Antonacci(ビアージョ・アントナッチ/53歳/Milano出身)もゲスト出演し、「Che fantastica storia e` la vita(意:人生とはなんと素敵な物語)」 「Amici mai(意:この上ない友人)」の2曲をVendittiとデュエット。

※当サイトでのBiagio Antonacciの紹介記事はコチラ
http://piccola-radio-italia.com/tag/Biagio_Antonacci

他にもこのライヴには見どころが多くあり、アルバム『Tortuga』をVendittiと共同プロデュースし、共作もしているカンタウトーレ&プロデューサーのAlessandro Canini(アレッサンドロ・カニーニ)が、そのマルチ・プレイヤーとしての才能を発揮し、ドラム、パーカッション、ギターなどを演奏している(他にベース、キーボードも演奏できる)。マルチ・プレイヤー自体は珍しくは無いが、大御所のバックバンド・メンバーとして、他の専門の楽器プレイヤーと共演するのは、余興程度の中途半端なマルチ・プレイヤーでは勤まるはずがない。

そして巨大なスタジアムでのコンサートのためか、多くの楽曲がAlessandroとDerek Wilson(デレク・ウイルソン)によるツイン・ドラム編成になっている事も見ごたえ充分だ。

そのドラマーDerek Wilsonはスコットランド出身ながら、東京にも住んでいたことがあるそうで、Vendittiのデビュー盤『Theorius campus』からの付き合い。バンドとしてはプログレ・バンドGoblin(ゴブリン)にも参加していたことがあり(1982年のアルバム『Volo』)、Riccardo Cocciante(リッカルド・コッチャンテ)のドラマーも務めていた経歴の持ち主。

Goblinネタでは、Dario Argento(ダリオ・アルジェント)監督の世界的大ヒット映画『サスペリア』シリーズのサントラにGoblinの音楽がこぞって採用されたため、世界中で最も聴かれたイタリアのバンドとも言える。そのGoblinが最も注目を集めた時期のベーシストだったFabio Pignatelli(ファビオ・ピニャテッリ)が、このVendittiのライヴでベースを弾いているのは、日本のプログレ・ファンには涙を流すほど嬉しいはず。

Angelo Abateの他のもうひとりのキーボード奏者Danilo Cherni(ダニーロ・ケルニ)は、現在のGoblin系列バンド(3つのバンドが存在)のうち、Fabio PignatelliとAgostino Marangolo(アゴスティーノ・マランゴロ/Ds./Pino Danieleのドラマーとしても活躍)が率いるGoblin Rebirth(ゴブリン・リバース)のキーボード奏者も務めている。また、アルバム『Tortuga』でVendittiと共作も行っている。

つまり、プログレ・サウンドとは無縁のAntonello Vendittiのライヴを支えるドラム、ベース、キーボードという重要パートは、実はプログレ系ミュージシャンで支えられているという不思議な図式が見て取れる訳だ。

※当サイトでのGoblinの紹介記事はコチラ
http://piccola-radio-italia.com/tag/Goblin

さらにはギタリストのToti Panzanelli(トティ・パンザネッリ)は、なぜか英ニュー・ウエイヴバンドSigue Sigue Sputnik(ジグ・ジグ・スパトニック)の再結成&初来日時の日本語のチラシをプリントしたTシャツを着てステージに立っており、知る人ぞ知るバンドの、しかも日本語のTシャツを着ているのか?そのTシャツはどこで入手したのか?などの謎が渦巻く(笑)。イタリア繋がりがあるとすれば、Giorgio Moroder(ジョルジョ・モロダー)プロデュースのバンドだったことか? Toti自身は、ジャズやブルースも奏でる渋いギタリストなのだが・・・

ジグジグスパトニック

Sigue Sigue Sputnik

また同ライヴの中には、一時期Vendittiのバックを務め、後にバンドStradaperta(ストラーダペルタ/意:開けた道)として独立した面々がバックを務めているパートもある。そして観客の中にRenato Zero(レナート・ゼロ)がいるのも確認できる。Vendittiの元妻の女優Simona Izzo(シモーナ・イッゾ)の姿も。

2月FESTAで紹介した楽曲は以下の通り。

「Raggio di luna(意:ひと筋の月光)」
「Stella(意:星)」
「Non so dirti quando(意:君にいつを言えない/『Tortuga』収録)」
「Sotto il segno dei pesci(意:うお座のもとで)」
「Sara(サーラ)」
「Nottte prima degli esami(意:試験前夜)」
「Cosa avevi in mente(意:君は心に何を持っていたの/『Tortuga』収録)」
「Dalla pelle al cuore(意:皮膚から心へ)」 /feat.Briga
「L'ultimo giorno rubato(意:奪われた最後の日/『Tortuga』収録)」
「Ogni volta(意:毎回)」
「Che fantastica storia e` la vita(意:人生とはなんと素敵な物語)」 /feat.Biagio Antonacci
「Amici mai(意:この上ない友人)」 /feat.Biagio Antonacci
「In questo mondo di ladri(意:この泥棒世界の中で)」
「Roma capoccia(意:ローマのリーダー)」 /feat. Briga
「Grazie Roma(意:ありがとうローマ)」 /feat.Carlo Verdone

コンサート最後の楽曲「Grazie Roma」には、映画監督&俳優のCarlo Verdone(カルロ・ヴェルドーネ/『グレート・ビューティー 追憶のローマ』『イタリア的、恋愛マニュアル』シリーズなどに出演)がドラムを叩いて出演(つまり同曲はトリプル・ドラム状態!で演奏される)。また映画プロデューサーのMassimo Ferrero(マッシモ・フェッレロ)もステージに引っ張り出されてVendittiとデュエットする。

同曲はVenditti作のローマ応援歌だが、現代のRomaを超えて、古代ローマ文化の末裔たち=イタリア応援歌として、W杯時にも大いに歌われる準国歌なみの人気を誇る楽曲だ。ちなみに2002年の日本と韓国で開催されたFIFAワールドカップ時には、Vendittiはイタリアのナショナル・チームを応援するためだけに来日し、チームのキャンプ地仙台に赴いて、選手たちの前で同曲を歌って労っている。

また、同曲の3番はローマ弁で歌われており、ローマ歌謡の伝承者Elena Bonelli(エレーナ・ボネッリ)によれば、"現在のところ最後に作られたロマーナ(ローマ語で歌われた楽曲)"とのこと。

※当サイトでのAntonello Vendittiの紹介記事はコチラ
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注)記事中の歌手の年齢は、記載時点での誕生日の到来を考慮はせず、2016年に達する年齢で表記。

次回のイベントは、2月27日(土)に東京・青山のベリタリアに於いて『第13回 百花繚乱』として開催。詳細情報→http://piccola-radio-italia.com/archives/52207127.html

3月の通常FESTAは、3月12日(土)に開催予定。