第4部

第4部はEnzo Gragnaniello(エンツォ・グラニャニエッロ/61歳/Napoli出身)の2枚組DVD『Malavista social tour』(2014)から。

Enzo Gragnaniello - Malavista social tour

Enzo Gragnanielloは、30歳ごろにようやくプロデビューした遅咲きのカンタウトーレで、ほぼ同い年のピーノ・ダニエレと並んで、新しいナポレターナを創作して来た逸材。

Pinoはインターナショナルなエッセンスも積極的に取り入れて、サウンド面で“Tarumbo(タルンボ)”と呼ばれる新たなスタイルを確立していったが、Enzoは他者への楽曲提供などの裏方の活動を多く手掛けたこともあり、どちらかというと地味な存在だが、カンタウトーレにとって栄誉あるTarga Tencoを3回も受賞しているように、ツウ好みの実力派アーティストと言えるだろう。

さて本作は2枚組DVDだが、DVD2は、Carlo Luglio(カルロ・ルーリオ)監督のドキュメンタリー映画作品『Radici(意:根っこ)』だ。

Enzoとその仲間たちが音楽を奏でるシーンを中心に、現在のナポリの町に繰り出し、昔のナポリの想い出を振り返ったりしている。ほぼナポリ語で会話しているため、イタリア語字幕と英語字幕が選べるのも面白い。予告編映像を紹介。

DVD1が2012年にナポリTrianon(トリアノン)劇場で収録されたライヴ映像。ドラム、ベース、マンドリン、エンツォのギターというシンプルな編成のバンド編成で始まる。

FESTAではまず「Nun me lassa(意:僕を置いて行かないで)」を紹介。ここではスタジオ録音版で。

2曲目は「Sott'o mare(意:海の下)」。ここではスタジオ録音版で。

3曲目は彼の代表曲「Cu'mme(意:僕と一緒に)」(1991)。これは正調ナポレターナの大御所だった故Roberto Muroloとイタリアを象徴する歌姫だった故Mia Martini(ミア・マルティーニ)というビッグな2人に歌われた名曲。ここでは1992年にこの3人が共演した貴重な映像で。

※当サイトでのMia Martiniの紹介記事はコチラ
http://piccola-radio-italia.com/tag/Mia_Martini

4曲目は「Indifferentemente(意:区別せずに)」。ライヴDVDの中では6人の最多メンバー構成となる最高の盛り上がりとなる1曲だ。なんといっても独特の振り付けで踊る妙に存在感のある舞踏家に目を奪われる。同じ映像がネット上には見当たらないので、同じ舞踏家が出演している異なるライヴ映像をここでは紹介しておく。

5曲目はEnzoがOrnella Vanoniとのコンビでサンレモ音楽祭1999に出場した楽曲「Alberi(意:木々)」。コンサートの最後から2曲目に収録された楽曲だが、なんとここでほとんどのバンドメンバーが退出し、チェリストとEnzoの2人体制でエンディングに向かう引き算の美学が醸し出されている。

最後はMia Martiniに提供した「Donna」のセルフカヴァー。ここでは1992年収録の貴重なMia Martiniとのデュエット映像で。

※当サイトでのEnzo Gragnanielloの紹介記事はコチラ
http://piccola-radio-italia.com/tag/Enzo_Gragnaniello


第118回FESTAは、“オルタナvsアダルト・コンテンポラリー”のテーマで選曲&構成したが、第2部のレポートでも述べたように、この2つの勢力は決して“vs(対決)”ではなく、“融合”しているということを理解していただきたい。

さらには、オルタナのもともとの定義である“メジャーでないもの”、人気&実力がありながらも敢えてインディペンデントの立ち位置で活動をするアーティストたち、という概念で語るなら、今回アダルト・コンテンポラリー音楽として紹介したMina、Joe Barbieri、Enzo Gragnanielloの3人とも、インディペンデント・レーベルから作品をリリースし続けており、その精神や生き様はまさに“オルタナ”なのだ。

サウンドのタイプで便宜上、ジャンル分けして互いに“vs”の位置に置いたテーマだったが、実は目指しているものは同じ。そういう本気のアーティストたちが多いイタリア音楽界だからこそ、円熟世代がいつまでも第一線で活躍し続けられるのだと思う。もちろん、それを見抜けるセンスを持ったリスナーに支えられているのは言うまでもない。だからイタリア音楽のファンは止められない&卒業する時期も来ない。というのが筆者の実感だ。


注)記事中の歌手の年齢は、記載時点での誕生日の到来を考慮はせず、2015年に達する年齢で表記。

次回のイベントは、3月14日(土)に東京・青山ベリタリアに於いて『百花繚乱!イタリア音楽』として開催。詳細情報→http://piccola-radio-italia.com/archives/52167583.html

そして4月4日(土)は、同じく東京・青山べリタリアに於いて『みんなで歌おう イタリアンポップス』の第2回が開講。詳細情報→http://piccola-radio-italia.com/archives/52163275.html

4月の通常FESTAは、4月25日(土)に開催予定。