その3はコチラ


第4部

第4部はイタリアの国民的スーパースターClaudio Baglioni(クラウディオ・バリォーニ/59歳/Roma出身)の特集。

1960年代の終わりごろ、10代でプロ入りをしたClaudio Baglioniは、1970年からはカンタウトーレとして大躍進を果たし、その後30年以上もイタリア音楽界を牽引してきた真のスーパースター。

※当サイトでのClaudio Baglioniの紹介記事はコチラ
http://piccola-radio-italia.com/tag/Claudio_Baglioni

2005年からTutti Qui(すべてここに)と名付けられた、自分史とも言えるアンソロジー集のシリーズを3年連続してリリースするという集大成的な活動を始めたClaudio。

そして2009年には、1972年の出世作となったアルバム「Questo piccolo grande amore(このはかなく大きな愛)」をテーマにした物語がRiccardo Donna監督の元で映画化されることになります。

映画公開に先駆けてClaudioはそのアルバム「Questo picccolo grande amore」の楽曲に新たなアレンジを施し、多くのゲスト歌手を招いて録音し直すという制作活動に着手。アルバムタイトルの頭文字を取って『Q.P.G.A.(ク・ピ・ジ・ア)』と名付けられたツアーをも開始します。

2009年11月には、新曲"Niente più(もう何も)"を加えて、「Q.P.G.A.」を2枚組のCDとしてリリースしました。

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FESTAではその新曲"Niente più(もう何も)"からClaudio Baglioniコーナーをスタートしました。Wind Music Award 2010に出演した際に、アルバム「Q.P.G.A.」がマルチ・プラチナ・ディスクを受賞するシーンの映像で。

この映像の中でClaudioは、さらにリクエストに応えて、名曲"Mille giorni di te e di me(僕と君の幾多の日々)"、そして"Tu come stai(君は元気かい)"のメドレーを披露してくれています。

が、我々日本のファンにとっては、むしろその後、Baglioniの口から衝撃的な発表があったことが、

超ビッグニュースなのです。

そうです。『Un solo mondo(世界はひとつ)』と名付けられたWorld Tourで5大陸を全て回る、正真正銘のWorld Tourにするということで、

東京で公演する

と発表しているのです!!

当FESTA会場でも参加者に驚きのどよめきが沸きました。長年全国のファンが半ば諦めかけていた

Claudio Baglioniの来日公演

が、今度こそ開催されるんですものね。すごく楽しみですね。

さてFESTA会場では、CDリリースの半年後となる2010年4月にリリースされたDVD「Q.P.G.A. Filmòpera」(2010)から作品紹介を続けました。

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Claudio Baglioniの出世作にして、既に最高の完成度を成していた、1972年当時としてはまだ珍しかったトータルコンセプトアルバム「Questo piccolo grande amore」の世界観を丁寧に映画の映像と、オリジナルアルバム収録曲とその派生曲で再現したもので、原曲も全て再アレンジされ、豪華なゲスト歌手を招いて収録されています。

残念ながら豪華ゲストは歌声あるいは楽器演奏のみで映像としては登場せず、Claudio自身が歌っているシーンもごく僅かというものですが、映画を観ていなくても、オリジナルアルバムを聴いていなくても、トータルコンセプトアルバム「Piccolo grande amore」の中に作り上げられた物語が読み解ける作品に仕上がっています。

ここではまず、映画のTrailer映像を紹介しておきましょう。

DVDに収められたオープニング曲はその名もズバリ"Ouverture(序曲)"。ゲスト歌手にはAndrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)を起用しています。

見ての通り、Baglioniの化身である若者が美しい少女に恋をし、やがて別れゆく物語。どこにでも良くある単なるラブストーリーなのですが、Claudio Baglioniが1972年にアルバムの中で作り上げた物語には、とてつもなくリアリティさと詩的才能が溢れていました。

Romaの地名や風物詩を曲のタイトルや歌詞にふんだんに盛り込みながら、学生運動に身を投じ、弾圧から辛くも逃れた先で彼女と知り合い、恋に落ちていく若者の心理を丁寧に描写。

学生運動の主旨に反する兵役につく苦悩と並行して、離れ離れになった恋心はさらに募るばかり。

そして悲劇の別れ・・・周囲との摩擦と葛藤、そしてやがてその苦い青春時代の出来事を乗り越えて、大人になっていく姿を、当時まだ若干21歳だったClaudio Baglioniが、偉大なストーリーテラーのように描いていたという驚愕の事実を、改めて確認することができるかと思います。

楽曲"Piazza del popolo(ポポロ広場)"は、Romaのポポロ広場に集結して、学生運動をしている若者の様子を描写した作品。

筆者も初めてRomaを訪れた際、真っ先に訪れた場所でもありました。まさにこの"Piazza del popolo(ポポロ広場)"の曲が脳裏に流れていたのは言うまでもありません。

「Q.P.G.A.」版では、同じローマ出身のカンタウトーレAlex Britti(アレックス・ブリッティ)が歌とギターで参加しています。

そして警察の弾圧から走って逃げた路地裏のBarで若者は美しい少女と運命的に出会い、恋に落ちます。曲名は"Una faccia pulita(汚れのない顔)"。「Q.P.G.A.」版ではIrene Grandi(イレーネ・グランディ)が参加しています。

Barで会計する際、今ではもう懐かしいGettone(ジェットーネ)が転がり出るという細かい描写がイカシテいます。

1970年代までは公衆電話や電車、自動販売機用のコインとして貨幣と同等の価値として、いやむしろ貨幣よりも有効に流通していたメダルです。

その後、友だちとの交流などを通して、彼らの愛は育まれていくのですが、そんな彼の元に兵役の赤紙が届きます。イタリアでも『赤紙』に準ずる"Cartolina rosa(ピンクのハガキ)"っていうのが面白いですね。

余談ですが1970年代当時のイタリアでは、まだ兵役が義務化されていましたが、もう少しあとの時代になると、兵役か社会福祉活動の選択制になったそうです。

「Q.P.G.A.」版では、派生曲版の"Stazione termini(ローマ駅)"というタイトルで、出征する彼と隠れて見送ろうとする彼女のドラマティックなシーンを描き出し、Edoardo Bennato(エドアルド・ベンナート)が粋なハーモニカを聴かせてくれます。

そして辛く苦しい兵隊生活の中で、彼女への想いは募るばかり。そしてあの名曲"Questo piccolo grande amore"が歌われるのです。

『piccolo(小さい)』と『grande(大きい)』という相反する形容詞を並べているのが趣がありますよね。

この場合の『piccolo』は『小さな』ではなく、『はかない』とか『ごくありふれた、普通の』というニュアンスですね。他人には『piccolo』だけれど、当事者には『大きな』愛なんですよね。

この楽曲は発表後13年経過した1985年に『canzone italiana del secolo(20世紀を代表するイタリア語の歌)』に選ばれるという偉業に輝いています。

「Q.P.G.A.」版では巨匠Ennio Morricone(エンニオ・モッリコーネ)がピアノで参加しています。

兵役についた彼は、休暇で故郷Romaに帰って来る機会に恵まれるのですが、彼女には意図的に連絡せず、突然を装って現れてビックリさせてやろうという演出を企みます。

ヤボな軍服じゃサマにならないから、ここはイカシタJeansできめて、夜になったら彼女の元に突撃だぁ・・・と妄想にふけりながら独りPorta Portese(ポルタ・ポルテーゼ)の蚤の市にJeansを仕入れに出かけます。

Claudioの楽曲"Porta Portese"は、あまりにも有名な"Questo piccolo grande amore"の影に隠れがちではありますが、こちらも名曲中の名曲で、その描写力とそこに流れる物語の語り部としての力量は素晴らしいものがあります。

Porta Porteseに集まる人々や商店主を生き生きと描写し、売り物の胡散臭さの表現力やPorta Porteseの混雑ぶりなどなど、本当にそこに居るかのように感じさせてくれます。

そして・・・・彼はPorta Porteseの雑踏の中に、愛しの彼女の姿を発見します・・・・
・・・が、親しそうにしている連れの男は誰なんだ?・・・・
どう見たって彼女の兄貴なんかじゃないゾ・・・・
くそっ、なかなかイケメンじゃないか・・・

と、彼は突然、むごい現実を突きつけられてしまうのです。

茫然となった彼はその場で踵を返し、実家に逃げるように帰ります。

兵役から休暇で帰って来た愛息を迎え入れる母は上機嫌・・・
でも失恋の現実から逃げ帰って来た息子には、母の応対がうっとうしくてなりません。そのすれ違いの対話の描写を歌にしている部分が見事。

母「お帰り、兵隊さんっ」

・・・息子は挨拶もせず母の前を通り過ぎていく

母「まぁ、何かあったの?」

息子「ママ、僕を独りにしてくれよ」

母「何か作ったげようか。お腹すいてるでしょ?」

息子「腹なんか減ってないし、何も要らないし、誰も必要じゃないよッ」

そして燃えるような2人の恋が終焉を迎える様子を歌った派生曲"Una storia finita(終わりの物語)"はAlice(アリーチェ) をゲストに迎え、続く"Sembra il primo giorno(最初の日のようだ)"は、Franco Battiato(フランコ・バッティアート)を迎えて、彼らの物語を走馬灯のように辿り、エンディングに導いていきます。

彼らはL'ultimo bacio(別れのくちづけ)を交わして、きちんと互いの恋を終わりにする勇気ある選択をし、その苦い苦しみを乗り越えて大人になっていく様子を描き出しています。

DVD「Q.P.G.A.」は、素晴らしい作品に仕上がっているとはいえ、Claudioが歌っている姿が拝めないのがどうしても欲求不満になりがちなので、FESTAのエンディングには、冒頭のWind Music Awardで披露してくれた"Quanto ti voglio(なんて君が欲しいのだろう)"を弾き語りするシーンを楽しんでもらいました。

World Tourの話題ではLondonの由緒あるRoyal Albert Hallでの公演の事が大きな話題になっていますね。
イタリア人POPS歌手としては史上3人目のRoyal Albert Hallの舞台を踏むことになるのですから。
(先駆者の2名は、Umberto TozziとZucchero)


注)記事中の歌手の年齢は、記載時点での誕生日の到来を考慮はせず、2010年に達する年齢で表記しています。

次回7月FESTAは、7月24日(土)の開催予定です。