その1はコチラ


 

Ivano Fossati(イヴァーノ・フォッサーティ/58歳/Genova出身)。

ピアノとフルートを学んだIvanoは、1970年代初頭、RockバンドDelirium(デリリウム)のフロントマンとして大ヒットを飛ばしますが、その直後に兵役に着いたため、事実上Deliriumを脱退した事になります。

兵役終了後はカンタウトーレとして、自らが曲を書き&歌う活動を始めつつ、数々の歌手に曲を書き下ろす名コンポーザー&プロデューサーとしての敏腕ぶりを発揮。

特にMia Martini(ミア・マルティーニ)とのコラボは、Mia Martiniをイタリア女性歌手の頂点へと導くことに成功し、Ivanoの手腕が大きな評価を受けることとなります。皮肉なことにその後のMia Martiniが、Ivanoの影響からなかなか脱却できないジレンマに苦しませてしまう事にもなってしまうほど。

Mina(ミーナ)、Patty Pravo(パッティ・プラヴォ)、Loredana Berté(ロレダーナ・ベルテ)、Fiorella Mannoia(フィオレッラ・マンノイア)、Anna Oxa(アンナ・オクサ)など、多くの女性歌手たちに積極的に曲を書き、イタリアでは短命で終わりがちな女性歌手たちを、長期に渡って輝かせ、大歌手に押し上げることにも成功した立役者。

こうして女性歌手のブレインとしてのイメージが強かったIvanoですが、1990年代からは同郷の先輩カンタウトーレFabrizio De André(ファブリツィオ・デ・アンドレ)と共作するようになり、特にFabrizioの遺作となったアルバム「Anime salve」(1996)では、Ivanoのクレジットが光る楽曲がいくつか収められていたことから、晩年のFabrizio De Andréの作品の重要な要素として貢献したことも、彼の足跡の中で非常に大きなステップになっているのは間違いありません。

こうして偉大なアーティストたちと対等以上の活動を続けてきたIvanoですが、実は彼らの一回りほど年下であるため、まだ58歳、というのが意外にビックリ。既に燻銀の鈍い光を放つ重鎮として誰もに一目置かれる存在ですから。

Ivano Fossati/Musica ModernaそんなIvano Fossatiの2年振りとなるオリジナルソロアルバムが、2008年10月10日に発売になっています。いつもながら渋すぎる・・・一聴だけでは『地味な作風』としか感じてもらえそうもないアルバムなので、FESTAでは、なかなか紹介できずにおりました。

今回もまた息子のClaudio Fossati(クラウディオ・フォッサーティ)をドラムに起用しています。前出のFabrizio De André(ファブリツィオ・デ・アンドレ)の娘Luvi De André(ルヴィ・デ・アンドレ)のデビューアルバム「Io non sono innocente」(2006)において、Claudio Fossatiはプロデューサー、コンポーザー、ドラマーとしての多彩な顔を見せていましたね。(2006年12月FESTAレポートを参照ください)

まずは、このアルバムの看板曲といっても良い、ノリの良いフォークロック曲"Il rimedio(治療)"を聴いていただきました。これは何回か聞いてみると実に耳残りの良い曲で、このリズムとメロディの心地よさを体感しながら口ずさめる楽曲です。

2曲目は、渋い心象風景を歌った渋い作風の楽曲"D'amore non parliamo più(愛については僕らは語らない)"。

来日公演歴もある名アコーディオン奏者RiccardoTesi(リッカルド・テーズィ)の演奏が光る、異様に静かながらも、内に秘めた狂おしい情念を感じさせる楽曲。

様々なシチュエーションを想定できる意味深い世界観を味わうために、対訳付きで紹介いたしました。

君の少女のような唇を 再び見る
夢とビールを一緒に飲み干す
君が注文した本たち
そして 君の膝の間に空を固定する
僕は キスのチャンピオンだった
そして 嘘つきのチャンピオン

いくつか歌を書いた
僕は 田舎の演奏家
でも とても熟練した 繊細な演奏家
やって来るお月さまの跡を辿って
美人とは口論しない
美人は立ち去ってしまう

君は独りで そこで何をしているんだ
この刻(とき)と共に
外はもう暗くなった

あらゆる街は 輝く
東方に
君を迎えに行くよ
そして愛については
僕らはもう語り合わない

あらゆる街は 輝く
東方に
君を微笑ますよ
そして愛については
僕らはもう語り合わない


3曲目は、Nanni Moretti(ナンニ・モレッティ)の映画『Caos calmo(静かな混沌)』(2008)のサントラに採用された"L'amore trasparente(透明な愛)"。 この楽曲は後に2008年のDavid di Donatello賞(その年に公開された映画のサントラに採用されたオリジナル楽曲の中から、優秀な5曲程度が選ばれる賞)を受賞することになります。

Claudioのドラムの乾いた響きがフィーチュアされながらも、静かで落ち着いた雰囲気の楽曲。映画『Caos calmo』は、妻に先立たれた男が残された10歳の娘と生きていく姿を描いた作品とのこと。


 

さてそのIvano Fossatiに育てられたと言っても良い女性歌手Fiorella Mannoia(フィオレッラ・マンノイア/55歳/Roma出身)。
彼女もまたサンレモ音楽祭で2度の批評家賞に輝き、より厳格な審査で有名なTarga Tenco(ルイジ・テンコ賞)を5度も勝ち取るという大歌手に成長しています。

曲を書かない歌手でありながら、1980年代から1〜2年毎にしっかりアルバムを出し続けて来れられたのは、イタリアの女性歌手を取り巻く状況から推察すると奇跡に近い業績だと思います。

Fiorella Mannoia/Il movimento del dareそんなFiorella Mannoiaの新作アルバム「Il movimento del dare(負債の動向)」(2008)が2008年11月7日に発売されました。
前作はベスト盤、2作前は南米のアーティスト達とのコラボ。3作前はライブ盤。4作前は伝説の4大アーティスト(Pino Daniele, Francesco De Gregori, Ron, Fiorella Mannoia)とのツアー収録作品だったことを考えると、2001年以来の7年ぶりのオリジナルアルバムと言えるかもしれません。

その期待を裏切ることなく、今回も鮮度の高いイタリアのカンタウトーレ達がこぞってFiorellaのために楽曲を提供してくれています。Ivano Fossati、Bungaro、Jovanotti、Pino Danieleなどなど。

1曲目に収録された"Io posso dire la mia sugli uomini"は、このアルバム一番の話題曲。ここ数年に渡って大ブレイクし続けているLigabue(リガブエ) が書き下ろした絶妙な佳曲で、サビの部分の歌い回しはまさにLigabue節が効きまくっていて、Ligabueが歌っている姿や声さえヴァーチャルに聞こえてきてしまうような楽曲です。

Fiorella Mannoiaの代表曲のひとつ"Quello che le donne non dicono (女たちが言わないこと)"は、女性の心の中の細かなヒダを歌い上げた名曲と言われていますが、今回の"Io posso dire la mia sugli uomini"もまた、女性の心の内面を歌い上げており"続・Quello che le donne non dicono"みたいな位置付けに納まりそうな世界観の楽曲です。おそらくこの『la mia(私の)』とは、『la mia amica(女友だち)』を示していると思います。『私は女友だちを男たち以上だと言える』というニュアンスかと。

2曲目は"Il re di chi ama troppo(誰かを愛しすぎた王様)"。29歳の若手でありながら、既にマエストロの風格が漂い始めた天才Tiziano Ferro(ティツィアーノ・フェッロ)がFiorellaに曲を書き下ろし、自らもデュエット参加しています。FESTAではFiorellaのみが出演したTVライヴの映像に、オリジナル音源を重ねて紹介しましたので、Tizianoのヴォーカル部分もFiorellaが歌っているように見えたのは少々不思議な感じでしたね。

そして3曲目はアルバムタイトル曲"Il movimento del dare(負債の動向)"。名匠Franco Battiato(フランコ・バッティアート)が、Fiorellaに書き下ろし、自らもデュエット参加しています。Fiorellaのアルトの音域に対して、甲高いFrancoのヴォーカルが被さると、男女の音域の差の常識感が崩れ去ってしまう倒錯感に陥ってしまいます。



注)記事中の歌手の年齢は、記載時点での誕生日の到来を考慮はせず、2009年に達する年齢で表記しています。

 

Continua alla prossima puntata.(続く)