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第2部

第2部は最近のFESTAで紹介する頻度が多くなっているエスニック編。好んで方言で歌われるイタリアPOPSを紹介しました。

Andrea Parodi & Elena Ledda /Rosa Resolza2007年8月Festaで紹介したTazendaですが、そのメインボーカリスト・故Andrea Parodi(1955-2006/51歳没/サルデーニャ北部Porto Torres出身) と Elena Ledda(48/Sardegna南部Cagliari郊外出身)のデュエットアルバム「Rosa resolza(=Rosa Coltello/薔薇色のナイフ)」(2007)から。Andreaが己の余命を悟り、死の1ヶ月前に残された力を振り絞って残した録音が、ここで聴く事が出来ます。サルド語音楽を代表するこの2人のコラボレーションは、長年計画されていたものの、このCDが最初で最後の作品となりました。

Elena Leddaは、慎ましい農民の家に生まれましたが芸術に目覚め、音楽学校に通ってオーボエと声楽を履修しました。声楽ではソプラノの資質を認められながらも、Elenaはサルデーニャの民族音楽の世界に身を投じ、1979年にアルバムデビュー。サルデーニャ方言、というよりもイタリア語とは別の言語と考えられるサルド語で歌うそのスタイルは、やがてワールド・ミュージックと総称される枠の中で語られるようになり、サルド語音楽を代表する歌手の一人として名を馳せるようになります。

サルデーニャは地中海最大の島いえども、所詮その地域だけで使われるマイナー言語であるサルド語。しかしながらそのサルド語自体にも多くの方言が存在し、大きく分類しても3つの系統が存在するそうです。Elenaの出身地はサルデーニャ南部ですが、彼女の歌はサルデーニャ北部の言語系統を採用しているところが、興味深いところ。

"Inghiros"は、アコーディオンの陽気なイントロに導かれ、タランテッラやピツィカピツィカ的な民族舞踊調のダンサブルな曲。最初はAndreaの特徴的な魅惑のボーカル。続いてElenaの低いボーカルが入ってきます。元来ソプラノのElenaにも関わらずアルトに近い音域で歌い、男のAndreaはカウンターテノールに近い音域という対比が面白い。

"Razaju"は、ビデオクリップも制作された、このアルバムの看板曲。晩年のFabrizio De Andrèのアルバムでも活躍したサルデーニャ女性3人で結成されたコーラスグループBalentesも参加したこの話題曲は、Andreaのボーカルで導かれるミドルテンポの静かな曲。やはり低音のElenaのボーカルが絡んできて、ジプシー音楽的な雰囲気が漂います。そしてBalentesのスキャットが土着風のテイストを加えながらも、地中海の明るさを醸し出してくれています。

ビデオクリップでは、サルデーニャの海とElenaの姿、そしてお馴染みの真っ赤なドレスに身を包んだBalentesの美女3名の姿が拝めます。Andreaの歌う姿は現れず、イメージ映像のみ。このビデオクリップの撮影時期には、もうAndreaの容態が悪くなっていたか、死後に作られたものなのでしょう。Andrea Parodi & Elena Ledda /Rosa Resolza

改めてCDジャケットを眺めると、もともと痩せた頬がさらに青白くこけて、トレードマークだった長髪が抗癌剤の副作用で抜け落ちたのを包み隠すようなニットキャップを被ったAndreaの在りし日の姿があります。彼は死期を悟ってからも、いつも微笑みを絶やさず、最期の時まで勇気を持って前向きに生きたと伝えられています。

奇しくも死の数ヶ月前に彼の愛娘が産まれていたようで、こんなセリフが残されています。

あの子にはLalaって名前を付けたんだ
"LALA"はサルデーニャでは"LABRA(くちびる)"を意味するから
僕が居なくなった後 あの子の口で引き継いでもらいたいんだよね


 

第2部2組目は、Pop/RockバンドのGiardino dei Semplici(意:純粋者たちの庭)。

GiardinoDeiSemplici/Trenta1970年代初頭のPoohの大成功に刺激され、男声の高音域を駆使したボーカル&コーラスでメロディアスな楽曲を歌うという同スタイルのバンドが数多く輩出された1970年代中ごろ、Giardino dei Sempliciも1975年にデビューを果たします。その後多くのバンドが短命でシーンから消えていく中、Giardino dei Sempliciは、今もなお活動を続けています。2005年にはデビュー30周年を記念してCD×2枚+DVD1枚の計3枚組「trenta(意:30)」(2005)がリリースされています。

彼らにとって幸運だったのは、名匠Giancarlo BigazziとTotò Savioにプロデュースされてサンレモ音楽祭に出場し、そのデビュー曲をヒットチャートの6位押し上げる事に成功した事でしょう。Festaでもこのヒットしたデビュー曲"M'innamorai(君は僕を魅惑するだろう)"を選曲。生ピアノにシンセを重ねた印象的なイントロに始まり、落ち着いた中音域のボーカル。そしてサビでは超高音のコーラスが入るのが、当時の流行から受け継ぐ重要な要素となっています。チューブラーベルズやオーケストラが効果的に彼らの演奏のバックに流れているのも効果が大きなアレンジとなっていますね。DVDでは、当時の映像から現在のライブに切り替わっていくという効果的な映像加工が施されているのが、興味深いところ。

彼らはNapoli出身のグループらしいアイデンティティを見せ付けたのも、その後の長い活動を支える重要な要素になったと思われます。世の大人たちから、単なるPop/Rock系のアイドルバンドと思われかけた彼らが、ナポレターナの名曲"Tu, ca' nun chiangne(邦題:泣かないお前)"(1975)をカバーした事は、イタリア社会で大きな話題をさらいました。シングルチャートの1位を記録しゴールドディスクを獲得します。

これをFestaでは2曲目に。高音のコーラスと低音の落ち着いたボーカルの掛け合い、そしてナポリ方言特有の甘い発音の歌詞が交じり合い、お馴染みのナポレターナに新たな息吹を吹き込み、ビッグセールスを残せたことは、彼らにとっても重要な試金石になったようです。

1977年のサンレモ音楽祭では優勝こそHomo Sapiensの"Bella da morire"に譲ったものの、彼らが歌った"Miele(はちみつ)"は、セールス面では最も大きな結果を残しました。

翌1978年にはFestivalbarに"Concerto in la minore (dedicato a lei)/イ短調のコンチェルト(彼女に捧ぐ)"で参加。これをFestaの3曲目に。フルオーケストラによる力強いイントロですぐにその曲と判る特徴的な曲です。ボーカルが入ると魅惑的な生ピアノの伴奏に。そしてサビに向かってストリングスが徐々に被ってくるという、ツボを押さえた演出。歌メロもイタリアらしい歌心あるもの。これはヒットするべくヒットした曲といえるでしょう。Festaの映像では、Valentina Stella(40/Napoli出身)をゲストに迎えて一緒に歌っているシーンが盛り込まれていました。Valentina Stellaは現代ナポレターナ歌手の中で、トップクラスの実力と言われています。

さて、今やNapoliを代表するアーティストの一員として、Napoliはもちろん、イタリア中にその存在感を示しているGiardino dei Sempliciですが、実は4人のメンバーのうち、ボーカル&ギターのGianfranco Caliendo(51)だけがFirenze出身である事はあまり知られていません。CaliendoはGiardino dei Sempliciの大半の楽曲の作曲者であり、2人のメインボーカリストのうちのひとりですので、いわばGiardino dei Sempliciの心臓的な存在。

ちなみにGiardino dei Semplici(純粋者たちの庭)は実在する庭で、NapoliではなくFilenzeの大学の自然史博物館の一角に存在しています。植物学的に価値のある植物を集めた場所のようです。(純粋種の植物を集めている?)

唯一人のFilenze出身者であるGianflanco Caliendoが、グループ発足時に決定権を握る存在だったのかもしれません。

Giadda Caliendo彼の家系は代々マンドリン奏者やギター奏者を輩出してきたCaliendo家。今も音楽学校を経営したりしていますが、愛娘Giada Caliendo(22)が僅か15歳で2001年のサンレモ音楽祭に出場していますので、当時のサンレモ音楽祭の映像でご紹介しました。

若手カンタウトーレのFrancesco Bocciaとコンビを組み、Francesco e Giadaとして"Turuturu"というノリの良い曲を歌いましたが、15歳らしい愛らしい雰囲気を漂わしながらも、とても高校1年生とは思えない堂々としたスケールが大きな歌いっぷりを見せてくれています。残念ながらその後は目立った活動がありませんが、多分にその翌年に同じ15歳でサンレモ音楽祭の新人部門で優勝するAnna Tatangelo(20)と存在が被ってしまったことが大きかったように思えます。Francesco&Giarda/Turuturu

Giardino dei Sempliciのラストは、最近の彼らのステージ映像から。ますますNapoliの顔としての存在意義を高めつつある彼らは、かつてヒットさせた"Tu, ca' nun chiangne"以外にも積極的にナポレターナの名曲をカバーしているというシーンをお届けしました。"O marenariello〜Anema e core〜'O sole mio〜Funicli' funicula`"と、ナポレターナの名曲中の名曲のメドレー。全員がアコースティックギターを抱えて(Luciano Liguoriのみアコースティックベースを弾いていますが)ステージに横一直線に並んでのアンプラグド・スタイルのライブです。その美しいハーモニーを充分に堪能させてもらえるステージ。

Continua alla prossima puntata.(続く)