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第2部

第2部は、Fabio Concatoに引き続き、サンレモ音楽祭2007出場者のNewアルバム特集。

サンレモ2007出場時の映像でAntonella Ruggiero(55/Genova出身)の曲"Canzone fra le guerre(戦争の狭間の歌)。

サンレモ2007優勝曲の"Ti regalerò una rosa"/Simone Cristicchi第26回FESTAレポート参照)と並んで、暗く陰鬱な作品です。サンレモのステージ上でもAntonellaの背後には戦災孤児たちの映像が映し出され、忌み歌とも解釈できる歌詞が聴衆の心を打ちます。

高音域への向かうサビ部分のメロディの抑揚にマッチするAntonellaの清らかな声が、まるで天使の囁きのように聴こえてくるところが美しい。

Antonella Ruggiero/Souvenir d'ItaliaAntonellaはサンレモ2007出場後、ライヴアルバム「Souvenir d'Italia(イタリアみやげ)」(2007)を発表。サンレモ2007出場曲以外は全て、2つの世界大戦の間の時期に流行したイタリア歌謡の名曲カバー集となっています。

1944年のヒット曲"Ti parlerò d'amor(あなたに愛を語ろう)"は、ビッグバンドの伴奏がイカシた、レトロ感溢れる愛の歌。Antonellaの浮遊感のあるヴォーカルの妙を楽しめます。

なお、このライヴアルバム"Souvenir d'Italia"(2007)は、通常版と限定版の2種類が発売され、限定版はAntonellaの過去のライヴアルバム2枚(「sacrarmonia live」(2004)、「stralunato recital_live」(2006))を同梱した3枚組ライヴアルバム集仕様。



続いてPaolo Meneguzzi(31/スイス出身)のサンレモ2007出場曲"Musica(音楽)"をタイトルに据えたアルバム「Musica」(2007)。

Paoloはスイスのイタリア語圏で生まれ、10歳の時に子供番組の挿入歌を歌って芸能界デビュー。20歳の時に南米チリの音楽祭で優勝し、そのままチリでアルバムをリリースして活躍していましたが、25歳の時にサンレモ音楽祭に出場してイタリアデビュー。

英語圏の影響が強い音楽スタイルとダンサブルな楽曲でイタリアの若者の人気を集めますが、30歳になったけじめなのか、今回のサンレモ音楽祭出場曲"Musica"は、実にサンレモ音楽祭向きの情緒溢れるイタリアらしい美しさに満ちた楽曲。

従来の基準ならば、サンレモ2007の優勝はSimone Cristicchiではなく、Paoloの"Musica"が選ばれていただろうと思えます。

今回のFESTAでは、その"Musica"をヴィデオクリップで紹介。

宮殿のような建物の中に有るプールサイドに佇む美女。Paoloは彼女に寄せる切ない想いを歌い始めます。

恐らく彼は彼女を失ってしまったようで、彼女がもし戻ってきてくれたなら、僕はこの後の人生をこうしていくのに・・・といった内容で、動詞の未来形がたくさん出てくる歌詞になっています。

現実の事象についてのみ現在形を使っていますが、そのひとつが、

perchè per me lo sai sei musica nell'anima
(なぜなら僕にとって君は心の音楽だから)

という部分。タイトルの"Musica(音楽)"とは、愛しい女性を音楽に例えた表現なのですね。同時に、彼にとっての『音楽』とは、かけがえの無いものであり、欠かすことができないものである、という意味をかもし出しています。

ヴィデオクリップの中では、Paoloが歌いかける美女に突然、天使の羽が生えてきます。彼女は音楽の妖精に化身したようです。Paoloが彼女を追い、2人は手を取り合いますが、プールの水が水柱のように立ち起こり、2人の間に水壁となって立ちはだかり、2人の仲を分けてしまいます。その水壁の向こうでは彼女が手を振って離れていってしまう・・・・
 
2007年の新作アルバム「Musica」では、こうしたイタリアらしい情緒に満ちた作品が1/3ぐらい、1/3ぐらいが従来のPaolo Meneguzziの音楽スタイルの延長的な作品、残りの1/3はその中間的な作品が収められています。

Paolo Meneguzziの2曲目は中間的なタイプの楽曲から"Ti amo ti odio(君を愛する・君を憎む)"。魔性の女に心を奪われた男の、相反する心理を描いた歌詞になっています。イントロはややイタリア的な情緒に包まれて始まりますが、サビの部分は軽快なリズムに乗せて、早口気味に、男の心の叫びを歌っています。
 
本作は従来のPaoloファンだけでなく、新しく大人のファンをもキャッチアップできるアルバムとなり、Paoloのターニングポイントになったと思えます。間違いなくイタリアの次の時代を担う注目株アーティストだと思います。



第2部の最後は、Mariangela(23/Emilia-Romagna州Piacenza出身)。

4歳でテレビ番組に初出演したのがきっかけで、芸能界に興味を持つようになり、ピアノと歌の勉強を始め音楽院にまで進学します。やがて学生仲間でロックバンドを結成。

17歳の時、Sweet Maryの芸名で英語のディスコ曲のシングル盤でデビュー。翌年には、イタリアの国民的ロックバンドPoohのヒット曲"Chi fermerà la musica(誰が音楽を止められるのか?)"(1981)の英語版"Music That Lives(生きた音楽)"をリリース。18歳になるこの年、サンレモ・アカデミーの最終選考にまで残り、RAI2の音楽番組Furore(熱狂)にコーラスガールとして参加するようになります。

20歳の時、芸名をMaryに変えて、音楽番組に出演。
翌21歳の時、本名であり現在の芸名でもあるMariangelaに改名し、ようやくイタリア語で歌うようになります。2007年になってサンレモ音楽祭の新人部門に初出場。その後ようやく初めてのアルバムがリリースされました。

Mariangela/…preparati a volare女性でさえも若い歌手が台頭しにくい実力主義の国、イタリアの芸能界の現実を垣間見る事ができます。

待望の表舞台に羽ばたく事を意図してかアルバムは「…preparati a volare(飛翔準備)」と名付けられています。

そんな注目の新星Mariangelaのサンレモ2007出場時の映像を少し紹介した後、ヴィデオクリップで出場曲"Ninna Nanna(子守歌)"を紹介しました。

子守唄はこの愛を寝付かせた
私は誰に歌ってあげようか
私が生きている限り
愛するあなたにだけ歌ってあげるわ

愛しい人 私の夢を見て
あなたを癒してあげるわ
愛しい人 私を夢みなさい
私があなたを暖めてあげるわ
そして妖精のようなキスで
あなたを目覚めさせるわ

アコースティックのピアノとギターの響きを活かしたおとなし目の曲ですが、歌詞は情熱的な子守唄です。

サンレモ2007では、上品な観客を意識してか、歌詞どおりの妖精のような清楚なワンピース姿とメイクで登場したものの、そのキュートな小悪魔的な魅力を司会アシスタントを務めるMichelle Hunziker(30/スイス出身)に見抜かれ、

「この子守唄はイタリアの男たちを誰も眠らせはしないわ!」

というほめ言葉をかけられていたのが印象的でした。

ヴィデオクリップの方では、上半身がチューブトップ状の黒のタイトのワンピース&グロスのリップというルックスで、アンニュイさに満ちた歌い方。妖しいフェロモン全開のパフォーマンスを見せてくれています。

2曲目は、2005年Mariangelaの最初のスマッシュヒットとなった"M'ama o m'amerà(私を愛しているの?それともこれから愛するの?)"

ラテンフレーヴァーが散りばめられたアレンジと情熱的な愛の歌詞で綴られた軽快なダンスナンバー。

人気テレビ番組『Domenica In』のTVライブ映像からお届けしました。出演者は男も女もノリノリで踊っています。

能天気な曲に聴こえますが、不思議と耳残りがする曲。
実際は低い音域から高い音域を行ったり来たりする、歌唱力を必要とする曲ですね。多重録音されたコーラスと本人との掛け合いもまた、耳残りしやすいところかもしれません。

第2部最後は、そんな赤丸急上昇中のMariangelaの活躍を紹介。
ラップフィールドで活躍するPiotta(33/Roma出身)の最新シングル"Hey"にゲスト参加した映像。

真夏の野外プールで、セクシーな白のビキニに身を包んだMariangelaが低い音域で、メロディアスなラップを披露しているシーンで第2部を終了しました。

Continua alla prossima puntata.(つづく)