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第3部 - ベテランシンガーのイタリア北部編。
1人目は待望の3枚組+ボーナス1枚=4枚組の公式ベスト盤「Un uomo(ある男)」(2007)が発売されたばかりのEugenio Finardi(55/Milano出身)。
1970年代、Area等の前衛的なプログレバンドが在籍したCrampsレーベルからデビューし、アヴァンギャルドなサウンドとアレンジの楽曲と浮遊感のあるボーカルで、日本でもプログレファンに知名度があるEugenioですが、洗練されたPOPSやブルース、ナポリ民謡までに幅を広げながらも、商業主義に迎合することを嫌い、一貫して反骨精神溢れるライフスタイルを生き抜いて来た反逆のカンタウトーレ。
代表作"Extraterrestre(地球外生物)"(1978)は、彼のアヴァンギャルドなサウンドメイキングの象徴的な作品。曲を通してベースが精力的に暴れまわっているのが魅力的。ギターやキーボードのバッキングが小粋に光り、ドラムの小技が効いた絶妙のアレンジ。そこに早口なフレーズでEugenioの浮遊感あるヴォーカルが気持よく乗ってきます。
1970年代からずっと日本の文化に深い興味を抱いて来たEugenioは、1983年に"Le ragazze di Osaka(大阪の女の子たち)"という曲をヒットさせます。その後、ご当地・女シリーズのように、"Le donne di Atene(アテネの女たち)"(1993)、"Le ragazze di Terceira(テルセイラの女の子たち)"(2001)と10年ごとにリリースしますが、イタリアで未だにもっとも有名なのはやはり、『大阪の女の子たち』です。食べ物、言葉、文化、歴史・・・・日本のことはなんでも関心があるし大好き、とはEugenio Finardi自身の弁です。
"Patrizia"(1990)は、打ち込みサウンドと電子楽器を使用しながらも、不思議な暖かさと透明感を感じる異色作。
再び1970年代の出世作に戻り、彼の反骨精神そのものの象徴作"Musica Ribelle(反逆の音楽)"(1976)。これまたベースが暴れまくり、ドラムの激しいビートが響き、エレクトリックバイオリンやキーボードの間奏がいかしたサウンド。納められたアルバムが「Sugo」というミートソースの缶詰のブランドを冠していましたが、あらゆる素材を手間暇かけて煮詰められたパスタソースと彼の音楽の類似点を象徴していたのでしょう。
最後にEugenio Finardi自身からFesta参加者に贈ってもらったメッセージを紹介しました。
Cari Amici Giapponesi, domo arigato gosaimas!
Il mio sogno è di venire un giorno a suonare a Tokyo...
Sayonara Amico Mio!
EF親愛なる日本の友人たちへ ドモ アリガト ゴザイマス!
僕の夢はいつか東京で演奏することさ。
サヨナラ 友よ
EF
「6月FestaでUn uomoのアルバムを紹介するから、日本のファンにメッセージをくれない?」とEugenioに依頼したら上記のようなメッセージをくれたのです。
数年前、僕は偶然ネットオークション上でEugenioが推薦のコメントを寄せる日本製ギターを発見し、そのギターを僕が購入したことから彼とのメール交換が始まりました。
高価なGibson製ギターでしか出せなかった音を、
1/5の価格のこの日本のギターは出してくれる
日本製品というものは、
たとえ大量生産で中国製であったとしても、
いつも素晴らしい
というのが日本びいきの彼ならではのコメント。
今では毎年、クリスマスカードを彼が送ってくれ、僕が日本の年賀状を送り返す関係を続けています。スターとファンという関係ではなく、単なる個人的なモードで交換しています。彼にも小さな娘がいて、Eugenioったら親バカ丸出しで、娘の写真を全面的に使ったeカードばかりですが(苦笑)。
以前に送ってくれた愛娘Francescaちゃんが心細そうに弾くヴァイオリンに合わせて、サンタの帽子をかぶったEugenioが幸せいっぱいにピアノを弾く映像を紹介しました。
第3部の2人目はGianna Nannini(51/Siena出身)。1970年代のデビュー以来、ロック姉ゴとして突っ走って来た感のあるGiannaですが、21世紀に入ってからは、すっかり落ち着いた大人の雰囲気の傑作を排出し、近作「Grazie(ありがとう)」(2006)は、1年以上の長期に渡りヒットチャートの上部に食い込み続けるなど、いよいよ大物エンターテイナーへの仲間入りか?と思わせる存在だったGianna。
5月に発売されたばかりの最新作「Pia - come la canto io(ピア 私が彼女を歌うように)」(2007)は、ダンテの神曲をモチーフにした現代オペラ作品集という前評判も、大人の落ち着いた作品集を期待させましたが、蓋を開けてみると、格調高さはかもし出しているものの、再びロッカーとしての熱い魂をも注力されたロックオペラ。
サンレモ2007でもゲストとして披露してくれましたが、アルバム発売後に音楽番組『CD Live』(RAI2)の映像で、"Dolente Pia(悲しみのピア)"を紹介。
ロック魂溢れる熱い魂を感じるポジティヴな楽曲。ストリートダンス系のバックダンサーのパフォーマンスもまた、単なるミュージカルでもオペラでもないことを醸し出しています。
Giannaもステージを精力的に動き回ったり、客席に飛び込んだりという熱いパフォーマンスで聴かせてくれます。
楽曲の最後にようやくソプラノの声でコーラスが入り、『現代オペラ』であることを彷彿とさせてくれます。
第3部ラストの曲はシングルカット曲"Mura mura(壁・壁)"。クラシカルなコーラスで静かに、讃美歌のような絢爛さで始まる楽曲。ハスキーヴォイスのGiannaが静かに歌い始め、だんだんとメロディに抑揚が出てきて盛り上がっていきます。
目を閉じて、思い通りに運ばない自分の人生を内省的に見つめるPiaの心情が歌われています。
静かな曲ながら、秘めた情熱を感じさせるGiannaのボーカルと、クラシカルなコーラスの幻想的な雰囲気が、この曲の格調を高めています。
Continua alla prossima puntata.(つづく)
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